防災・減災研究センターが国内最大規模の可変勾配実験水路の公開実験を行いました

 

広島大学防災・減災研究センターは11月8日、国土交通省中国地方整備局と共同で可変勾配実験水路を設置し、公開実験を行いました。
公開実験には、中国地方整備局、NEXCO西日本、建設コンサルタントなどから約70人が見学に訪れました。

 

公開実験の様子

 

この実験水路は、2018年7月の西日本豪雨災害で、道路に流出した土石流等が、そのまま道路を流れ下って道路利用者や施設などに被害をもたらす事例が多発したことをきっかけとして、中国地方整備局と本学が道路の安全対策の拡充に向けた共同研究に取り組むために導入したものです。

この実験水路は、長さ15メートル、幅0.1メートル、高さ0.3メートルの装置で、水路を0度から20度まで勾配を変更することができる、国内最大規模の可変勾配実験水路です。
この施設では、土石流等を再現することと、水路の下に設置した氾濫台に地形や道路の路面などの模型などをおいて、流れ出てきた土石流等の動きを調べることができます。
今後は、広島県における土石流研究の中心的な施設として自治体、企業などとも連携しながら、研究・教育活動に活用していきます。

 

土砂が流れ落ちた後(大きな石が土砂の先頭に集まっているのが見えます)

 

海堀センター長は、この施設で、土砂が流れ下るうちに大きな石(コアストーン)が土石流の先頭部に集まってくる様子を見ることができることに触れ、広島県に多いコアストーンによる被害拡大のイメージをわかりやすく伝えることができることに期待するとともに、道路や砂防ダムなどの効果的な配置などによる防災・減災につながる基礎研究を進めていくと決意を述べました。

 

インタビューに応じる海堀センター長

公開実験を総括する畠教授

海堀センター長による解説

お披露目会の後、「土の中に埋まっていたコアストーンが徐々に先頭部に集まり,追い抜くことなく一緒に流下する理由はなぜですか?」というご質問がありました。不思議ですね。

当日の実験をご覧になられた時に、ハイスピードカメラで横方向から撮影した画像を、テントの中の大画面モニターで繰り返し再生していたと思います。土石流等の流れは、水路床の抵抗を受けるために水路床近辺の流れほど遅く、底から離れるにつれて速度が大きくなっていたのを思い出して下さい。

土石流等として移動中の土粒子は、その流れの中で互いに押し合っています。大きな粒子は小さな粒子の上に押し出される特徴があるので、大きい粒子は小さい粒子に比べてより速い流れで押される部分が多くなり、前転・前進をしながら前の粒子の上に乗り上げる傾向を持ちます。すると、さらに速い流れの領域に移動したことになり、より前転・前進する傾向が大きくなります。これを繰り返しているうちに、最も流れの速い表面近くに到達し、土石流等の流下に伴って、先頭部に追いついていくことになります。

先頭部では巻き込み運動が生じており、その回転運動によるエネルギーロスのために流速としては大きなものになれません。すなわち、先頭部の巨礫が集まっている部分は後続からの速い流れによって押されるようにして、前進を続けることになります。もし何らかの影響で先頭部が減速・停止する時には後続の流れが巨礫部を追い越して流下するようになります。

お問い合わせ先

防災・減災研究センター
hrrc*hiroshima-u.ac.jp  (*は半角@に置き換えてください)


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