植物のカンキツグリーニング病において2価鉄供給資材による症状緩和効果を発見

愛知製鋼株式会社(代表取締役社長: 藤岡高広)の未来創生開発部 次世代あぐり開発グループと、広島大学の正岡淑邦名誉教授及び同大学大学院生物圏科学研究科の研究グループは、2価鉄供給資材※1の散布がカンキツグリーニング病※2(以下「CG病」)の症状緩和に高い効果があることを発見・実証しました。

本成果は学術論文として生命科学を専門とするInternational Journal of Molecular Sciences(MDPI出版社: 本社スイス、バーゼル) に掲載されました。

CG病はカンキツ類の生産量を大きく減少させる病害として、世界中の熱帯・亜熱帯地域で猛威を振るっており、感染樹の伐採以外の抜本的な対応策がないため、深刻な問題となっています。

正岡氏及び同大学の研究グループはCG病の感染樹の症状が鉄欠乏の症状に似ていることに着眼し、愛知製鋼が開発した植物に吸収されやすい2価鉄供給資材を感染したカンキツ樹(ラフレモン等)に温室内で散布した結果、症状が緩和することを実証しました。なお、溶液中の2価鉄の測定は株式会社豊田中央研究所により実施されました。

同グループはCG病に感染した樹は鉄の栄養が行き渡らなくなり、鉄欠乏を起こすと推定しました。通常の鉄材(3価鉄)は植物に吸収されにくいものの、2価鉄であれば病気にかかった樹でも鉄栄養が吸収され、鉄欠乏症状が改善されると考えられます。

今後は、アメリカ、東南アジアなどCG病が蔓延している地域でフィールド実証による効果の検証を行い、カンキツの安定供給に貢献していきます。

 

2価鉄供給資材散布前後の比較 (閉鎖系温室での試験の様子)

用語説明

(※1) 2価鉄供給資材
植物が2価鉄イオンとして鉄を吸収しやすく加工した鉄溶液資材。鉄イオンは大気中では通常は3価で存在するが、植物は2価鉄イオンの形に変換してから鉄栄養を植物体内に取り入れる。

(※2) カンキツグリーニング病
細菌によって起こるカンキツ類が発症する病気で、葉が黄化し樹全体に進行すると生育不良となり、果実の成長も鈍り、枝枯れや株枯れを引き起こす。

論文情報

  • 掲載誌: International Journal of Molecular Sciences
  • 論文タイトル: Fe2+ Ions Alleviate the Symptom of Citrus Greening Disease
【お問い合わせ先】

愛知製鋼株式会社 総務・広報部 広報室
TEL: 052-603-9216

広島大学 財務・総務室広報部広報グループ
E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)


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