島田昌之准教授らの共同研究がScience(サイエンス)誌に掲載されました



島田昌之准教授と米国 Baylor College of Medicine の JoAnne S. Richards 教授らとの

卵巣特異的ERK1/2欠損マウスに関する共同研究の成果が、Science(サイエンス)誌

Volume324(2009年5月15日号 / p938-941)に掲載されました。



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<Science(サイエンス)Volume324(2009年5月15日号)掲載研究の要旨>






MAPK3/1 (ERK1/2) in Ovarian Granulosa Cells Are Essential for Female Fertility

  Heng-Yu Fan, Zhilin Liu, Masayuki Shimada, Esta Sterneck, Peter F. Johnson,

  Stephen M. Hedrick, JoAnne S. Richards, Science 324: 938-941, 2009

ERK1/2は、成長因子受容体の下流に存在するシグナル伝達因子で、多くの組織において重要な役割を果たすと

考えられています。しかし、ERK2 遺伝子欠損マウスは胎生致死のため、繁殖能力をはじめとする体内での役割を

解明することは困難でした。本研究では、Cre-LoxPをもちいて、卵巣の顆粒膜細胞でのみCreを発現する遺伝子導入

マウス(Cyp19A1Cre mice)とERK1-/-、 ERK2flox/flox遺伝子改変マウスを交配することにより、成熟した雌卵巣の顆粒

膜細胞でのみそれらの遺伝子を欠損させることに成功しました。その解析の結果、発情期が終了せず、卵子の成熟が

誘起されず、排卵不全を呈する完全不妊であることがわかりました。つまり、ERK1/2は、発情期から排卵期・黄体期へ

と雌個体の発情周期を転換させるキーファクターであることが初めて明らかとなりました。



さらに、排卵刺激は、ERK1/2により転写因子であるC/EBPが活性化され、女性ホルモン(エストロジェン)を代謝分解

させるSult1e1の遺伝子発現が上昇すること、このSult1e1の発現異常は、マウスのみでなく、人の不妊症の原因と

なっていることが示唆されたことから、ERK1-/-ERK2flox/flox; Cyp19A1Cre miceの解析結果は、不妊の予防や、

高度生殖補助医療へ貢献するものと期待しています。


私達は、卵巣における成長因子の作用や、発現する遺伝子の網羅的な解析などを米国 Baylor College of Medicine の

JoAnne S. Richards 教授との共同研究で実施してきました。本研究においても、発現する遺伝子の機能解析や発現

制御機構の解析などを分担し、大学院生(M2野間君)・卒論生(H20年度卒論生下中さん、田畑さん)とともに研究を

行ってきました。また、共同研究のきっかけは、2004~2005年度の文部科学省海外先進教育・研究プログラムにより

Baylor College of Medicineに派遣されたことからスタートしています。この場を借りて、御礼申し上げます。

なお、本研究の一部は、文部科学省科学研究費補助金若手研究(A)(18688016)により実施したものです。


※ 詳しくは、
http://home.hiroshima-u.ac.jp/seisyoku/framepage%20shimada.html(家畜生殖学研究室 島田グループ

  ウェブサイト)をご覧下さい。


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