最新のX線偏光観測により「かに星雲」の特異な磁場構造が明らかに

本宇宙科学センターの水野恒史を含むIXPE衛星チームは,代表的なパルサー風星雲である「かに星雲」のX線偏光観測を行い,特異な磁場構造を明らかにしました。

2021年末に打ち上げられたIXPE衛星は,X線で「偏光観測」と「撮像」を初めて実現した衛星です。また「かに星雲」はおうし座にある代表的な高エネルギー天体で,中心にある高速回転する中性子星(パルサー)から吹き出す高速のプラズマ風(パルサー風)をエネルギー源として,電荷を持った粒子が周りに広がり幅広い波長で輝いています(パルサー風星雲)。パルサー風星雲の活動性を担うのは磁場であり,波(電磁波)であるX線の偏り方を測る偏光観測は,磁場の構造を探る強力な手段です。

従来の「撮像」では,細かい構造もありますが,X線放射はパルサーの回転軸に対し概ね対称であることが知られていました。しかしIXPE衛星による「偏光撮像」で,磁場の向きが場所によって異なり,また磁場の整列度(どの程度綺麗に向きが揃っているか)が極めて非対称であることが初めて明らかになりました。この成果は46日付で,Nature Astronomy誌に掲載されました。データ解析では,水野恒史(広島大学),郡司修一,渡邉瑛里(山形大学),北口貴雄(理研)らが大きな貢献をしました。

「かに星雲」の磁場構造はこれまで様々な理論計算が行われてきましたが,このような特異な形状を予想したモデルはありませんでした。今後観測と理論研究を進めることで,パルサー風星雲の理解が進むと期待されます。

 

図1「かに星雲」の多波長イメージに,IXPE衛星で得られた磁場構造(向きと整列度を示すオレンジの線)を重ねたもの。(Credits: Magnetic field lines: NASA/Bucciantini et al; X-ray: NASA/CXC/SAO; Optical: NASA/STScI; Infrared: NASA-JPL-Caltech)

 

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