宇宙科学センター長 川端 弘治 教授
センター長挨拶
2017年4月より宇宙科学センター長を拝命しました川端弘治です。当センターは、国立天文台より譲り受けた有効径1.5m「かなた」望遠鏡(旧称・赤外シミュレータ)の移設・運用母体として、2004年に設置されて以来、2006年に東広島天文台の竣工、2008年にフェルミ(旧称・GLAST; 注)ガンマ線天文衛星のNASAからの打ち上げを経ながら、「宇宙の突発・激動現象」「多波長・多モード連携観測」に力点を据えた、最先端の観測天文学の推進に努めて参りました。
宇宙はとても広大で、様々な謎に満ちています。最近も、2015年9月に人類が初めて捕捉した「重力波」は、太陽の数倍~数十倍の質量を持つブラックホール同士の衝突が、予想を遥かに超える頻度で起こっていることを如実に教えてくれました。このような活動的な宇宙を扱う「時間領域天文学(time domain astronomy)」の推進に、宇宙科学センターでは力を入れています。観測機会が限られる突発現象の研究においては、天体が発する電磁波を機動的・多角的に観測することが肝要で、そのための機材や体制の準備が鍵を握ります。当センターでは、理学研究科の高エネルギー宇宙グループと密接に協力しながら、かなた望遠鏡を中核とした多波長研究の体制を整えつつ、国内外の大学や研究機関と共同観測・共同研究を進めてきました。今後も、次世代のX線・ガンマ線衛星や地上大型望遠鏡計画への参与を初め、中国・チベットの標高5000mを超える高地へのパイロット望遠鏡の設置(HinOTORIプロジェクト)や全天可視偏光サーベイ(SGMAPプロジェクト)といった新たな「目」の開拓を通じて、宇宙の謎の解明へ向けて貢献していきたいと考えています。
教育面では、これまでと同様に天文学・宇宙物理学の大学院教育を通じ、基礎科学や実践的な科学・工学・統計学の普及に努め、次世代を担う研究者や技術者の養成に携わっていきたいと思います。さらに、市民の皆様に科学を身近に感じて頂けるよう、かなた望遠鏡を用いた観望会やセミナー、観測実習等も引き続き開催して参ります。小中高校生や地域団体の皆様からの施設見学や出張講座なども随時受け付けています。
大学や当センターを取り巻く状況は、決して楽観的ではありませんが、西日本における中核的な宇宙観測研究の拠点として優れた研究成果を排出し続けるよう、スタッフ一同努力して参りたいと思います。
また、当センターに関係される皆様には、今後ともご協力、ご鞭撻をお願い申し上げます。
2017年4月 川端 弘治
- (注) フェルミ・ガンマ線衛星は、初代センター長の大杉節 広島大学名誉教授を中心とした広島大学のグループが開発に大きく寄与しており、その運用にも宇宙科学センターが重要な貢献をしています。