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1.5m光学赤外線望遠鏡 かなた (旧・赤外シミュレーター)
広島大学宇宙科学センターは、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 国立天文台より譲り受けた1.5m光学赤外線望遠鏡「かなた」を機軸に、X線やガンマ線などの高エネルギー天文衛星と密に連携した最先端の観測天文学研究を推進する母体として、2004年4月1日に発足した学内共同教育研究施設です。これまでに、東広島市当局や国立天文台などの協力を得て、宇宙科学センター附属東広島天文台の建設と、観測研究基盤の整備を進めて参りました。かなた望遠鏡は2006年4月に天文台ドームへ移設され、観測装置を含めた立ち上げが行われた後、2006年10月から本格的な観測を開始しました。2008年からは、NASAが打ち上げたガンマ線衛星フェルミと連携した多波長観測などが精力的に進められています。
かなた望遠鏡は、国立天文台三鷹キャンパスに1994年に赤外シミュレータとして設置され、すばる望遠鏡に取り付けられる観測装置や鏡の試験などに活躍してきました。この反射型望遠鏡の主鏡の直径は1.5mであり、これが大きいほど、暗くて遠い天体まで見通すことができます。国内に設置されている望遠鏡としては5番目の大きさを誇ります(2021年現在)。すばる望遠鏡などの世界的な大望遠鏡に比べると、口径の点では見劣りがしますが、豊富な望遠鏡時間と高いアクセシビリティ、及び6度/秒の素早い駆動速度(方位軸)は、大望遠鏡では到底得ることが出来ない特長です。また、かなた望遠鏡に取り付けられている観測装置も、可視光と近赤外線との同時観測や偏光測定など、特殊な機能を持っている点もユニークです。2009年9月、および2010年2月に全国紙等で報道された「史上もっとも明るいIa型超新星」「超巨大ブラックホール周辺の構造を解明」などの研究成果は、豊富な観測時間と特徴ある機能が活かされた、かなた望遠鏡ならではの成果であったと言えるでしょう。
宇宙科学センターでは、かなた望遠鏡の駆動制御系を更新するとともに、望遠鏡に取り付ける観測装置を高エネルギー天体の観測に特化して、世界的にもユニークな天体物理学を推進しています。X線やガンマ線を放出する高エネルギー天体には、ガンマ線バーストや、ブラックホール連星、中性子星連星、その他激変星などが含まれ、その多くが突発的あるいは一過性の激しい現象を示します。最近、直接観測が話題となった重力波も、同類の突発的現象により放出されたものと考えられています。これらの特異な宇宙物理を理解するためには、その一時的な現象を如何にして正確に捕らえるかが重要なポイントになります。つまり、天体出現のアラート(位置情報を伴う警報)に即座に応じて観測を開始することや、ひとつの天体を継続して観測することが欠かせません。観測プログラムがあらかじめ決められる大学共同利用機関の汎用型望遠鏡ではなく、大学附設の専用型望遠鏡で狙う理由が、ここにあります。但し、その実現のためには単に望遠鏡を所有するだけでは不十分で、その目的に応じた観測装置の開発や、安全系統の整備、人員体制の確立が不可欠です。例えば、実際に東広島キャンパスからの遠隔観測を実現させ、大学院生を中心に毎晩のようにキャンパスから観測し、東広島天文台ならではのユニーク研究を進めています。
かなた望遠鏡では2006年秋以降は本格的な観測体制が敷かれ、宇宙科学センターの研究プロジェクトを中心とした最先端の天文学推進を目指す科学的利用に供されています。しかし、100%の望遠鏡時間を広島大学の研究者が占有する訳ではありません。平時には、全国の大学や研究機関に属する研究者(大学院生を含む)との共同研究による観測も行っています。また、ごく限られた日数になりますが、一般観望会の開催も行っていますし、教育の一環として各種団体向けの見学会・観望会も随時受け付けています。施設内には出入りはできませんが、敷地内は自由に通行できますし、望遠鏡の様子を昼間に自由に見られる窓も設けています。大学の研究教育を目的とした施設であり、すべてのご要望にお応えできる訳ではありませんが、なるべく実現するよう努力して参りますので、どうかよろしくお願い致します。(最終更新 2021年9月26日)
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