国際同窓生からの声 第5回 

時折思い出します

ドミトリー マムチュル(ロシア出身)
2016年11月掲載

こんにちは。自転車に乗るのが大好きなドミトリーです。風景の中を駆け抜けながら、くちばしを半開きにして電柱の上に止まっているカラス、空中にとどまっていたと思ったらすぐに飛んでいってしまうトンボ、風で飛ばされたおにぎりの包み紙など・・・、様々な小さな事を観察しています。お分かりかもしれませんが、様々なことを観察することで気晴らしをしながら、自転車に乗っています。もちろん自転車に乗っている以外のときにも!!

広島大学でのHUSA学生としての1年間は、数えきれないほどの様々な気晴らしの機会が(ありがたいことに)ありました。そして、それは現在の仕事にもつながっています。

私の専攻はコンピューター科学です。この世で「魔法使い」として成功することが不可能に近いということに気づいてから、2番目にすばらしいと思っていた(それも、また魔法使いのようなものですが)、プログラムを書くことを志しました。ゲームというは、これまで作られたものの中で、最高で、かつ最も不思議なプログラムだと思います。時間があるときは、気がつけばたいていゲームをしています。

ゲーム業界においての日本の重要性は過大評価しづらい状況になっていること、また上達していた自身の日本語能力をふまえ、就職活動で自分の運を試してみることにしました。そして、この決断は最終的に、1980年代の第三世代コンソールに遡る歴史のあるゲーム販売会社へと私を導いてくれました。しかも、勤務地は広島大学のすぐそばでした。

現在、私たちの会社は、携帯電話を中心にJRPGとアドベンチャーゲームを端末に配信しています。日常生活のストレスなどから現実逃避できる質の高い気晴らしを提供するために、全国のゲーム制作会社とコラボレーションし、ゲームの共同開発をしています。

ソフトエンジニアとしての私の仕事はプロジェクトマネージャー、ゲームデザイナー、そしてアーティストと協力し、みんなの力作を、一つのきちんとした商品―完成されたゲームになるよう、まとめることです。また、他社のゲームをあらゆるサードパーティのライブラリにまとめたり、デジタル配信プラットホームでリリースするための準備をしたり、時には全く新しい作業をしています。多くの困難があるものの、やりがいがあり、ある程度自由に創造できる面もあるので、とても楽しんでいます。

日本の会社にはいくつかの面白い「クセ」があります。例えば、新しい年を迎える前の、オフィスの「大掃除」など。しかし、偏見を持たずに従うことで、時にきわめて面白い経験につながることがあります。
呉のラーメン店に昼ご飯を食べに行った時のことです。私たち4人を含め、店内の客はみんなスーツを着ていました。つまり、その店内では、ビシッとスーツを決めた人たちが、ラーメンをすすっているのですーあたかも明日はもう来ないかのように。 慣れるまではかなり面白い光景にうつるかもしれません。また、アメリカでゲームショーに参加した時は、車体も窓ガラスも真っ黒で、ほんの小さな窓しかない大きなレンタカーを借りて、あちこち運転しました。まるで映画から出てきたような犯罪グループ組織のようだったと思います。本当に楽しい思い出です!

広島に来て、5年という月日が経ちましたが、今でも私は、ほぼ毎日自転車に乗っています。空は広いし、カラスも相変わらず面白く、そして騒がしいです。けれども、広島大学が私の人生にもたらした変化は非常に大きく、それに代わるものは考えられません。私が留学を通して得たものは、今でも連絡を取り合っている人たち、仕事、日本で生活する機会、そして食べたい時にいつでもお好み焼きが食べられること、まさしく何物にも代えがたいものです。

いまは、来たる10月の酒祭り、そして今度参加するしまなみ海道自転車の旅をとても楽しみにしています!

原文:英語
(このエッセーは2016年9月に寄稿していただきました。)

しまなみ海道自転車の旅(2014年)

ベトナム フーコックにて(2015年)

ユニバーサルスタジオジャパンにて(2016年)

プロフィール

氏名:ドミトリー マムチュル
広島大学での所属:工学研究科 広島大学短期交換留学プログラム(HUSA)
在籍年:2011-2012年
現在の職業:ソフトウェアエンジニア


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