寄贈本の紹介(2022年度)

近代中国の国家と商人-税政と同業秩序のダイナミクス-

著者:金子 肇

発 行 所:有志舎

著者からのメッセージ

中国では、改革開放以来、企業家を会員として同業で協力し合う同業組合が復活し、中国経済に大きな影響力を与えつつあります。中国の同業組合は、清朝末期から中華民国期・中華人民共和国成立初期に生成・発展し、歴代の政府は同業組合に税の徴収さえ請負わせていました。ところが、中国共産党による急激な社会主義化によって、同業組合は1950年代後半に歴史からいったん消滅します。本書では、近代中国において国家と同業組合がおりなした対立と共棲のダイナミクスを、税政に視点をすえながら歴史的・系統的に描きました。

シェリ=ビビの最初の冒険

著者:ガストン・ルルー
訳者:宮川 朗子

発 行 所:国書刊行会

著者からのメッセージ

 『オペラ座の怪人』の著者ガストン・ルルーが書いたもう一人の怪人シェリ=ビビの物語です。フランス文学の地下鉱脈にある囚人文学の伝統を継承する作品ですが、この系譜の文学を賑わせてきた冷酷非情なダークヒーローたちの中で、根は純朴で愛情深く、時に突拍子もない行動に走って周囲を驚かせるシェリ=ビビは異彩を放っています。
1913年の新聞連載で人気を集めてから今日にいたるまで、読み継がれてきただけでなく、フランスやアメリカでは、映画やBD(バンド・デシネ)などにも翻案されてきました。日本語訳は、本書が初めてだと思います。

多謝!

著者:下岡 友加

発 行 所:ふらんす堂

著者からのメッセージ

 本書は本学教員・下岡友加の第一句集である。2010年、下岡は戦後台湾の日本語作家であり、台北俳句会主宰・第3回正岡子規国際俳句賞受賞者の黄霊芝(1928-2016)にインタヴューを依頼した。その際、交換条件として台北俳句会への毎月の投句を求められ、開始した句作の集積が本書である。台北俳句会への投句に基づくため、使用季語は黄霊芝『台湾俳句歳時記』(言叢社、2003)の分類に拠った。構成は「年末年始」「暖かい頃(春)」「暑い頃(夏)」「涼しい頃(秋)」「寒い頃(冬)」「黄霊芝先生へ捧ぐ」の六章仕立てであり、台湾および日本での生活体験を詠む。タイトルは台湾語の「ありがとう」を意味している。

岡田(永代)美知代著作集

著  者:岡田(永代) 美知代
編  者:有元伸子・府中市上下歴史文化資料館
発行所:溪水社

編者からのメッセージ

 本書は、広島県府中市上下町出身の小説家・翻訳家、岡田(永代)美知代(1885-1968)の著作集です。内容は画像のオビをご覧ください。本著作集には、従来も知られていた作品に加えて、編者が各地の図書館・文学館で新聞雑誌等をしらみつぶしに探して発掘した作品も多く含まれています。田山花袋や女性作家に関する実証的研究のための一次資料であるとともに、MeToo運動が起きている現代だからこそ読み直し再評価が待たれる作品群でもあります。本書のカバーデザインは、演習で美知代作品を深く読み解いた経験をもつ大学院生の矢吹文乃さんが担当して、そうした〈新しい女〉としての美知代と作品のイメージを表現してくれました。
 なお、ホームページ「広島の女性作家・岡田(永代)美知代」では、詳細な年譜、著作リスト、参考文献等を公開しています。本書を補完するガイドとしてご高覧いただければ幸いです。ホームページはこちらからご覧ください。

Inclusive Development in South Asia

編著者:粟屋利江・友澤和夫
発行所:Routledge

編著者からのメッセージ

 本書は、南アジアにおける包摂的な成長の多層的な側面と複雑さを考察したものであり、「空間的次元、労働、移住」に関わる7章 と、「社会的次元、包摂を超えて」に関する7章の計14章から構成されている。地域格差、都市-農村格差、教育格差、低カースト、少数民族、ジェンダー、その他の社会的に弱い立場に置かれている人々を具体的に取り上げ、それらの包摂-排除の問題が相互に関連していることを論じている。現地調査に基づく情報と二次的なデータに基づく分析を織り交ぜ、テーマに即した有効なアプローチが展開されている。南アジアにおいて包摂的な成長がどの程度実現されているかを評価するとともに、同地域の多様な社会の経験にも眼差しを向け、 「インクルーシブ」 概念に新たな知見をもたらしている。

人間の人格性と社会的コミットメント

著者:ミヒャエル・クヴァンテ
編者:後藤弘志
訳者:岡本慎平、桐原隆弘、硲 智樹 他
発行所:リベルタス出版

編者からのメッセージ

 本書は、自然と精神、個人と社会を媒介関係において捉えるヘーゲル的な重層的人格概念を核として〈プラグマティスティック人間学〉を構想するミュンスター大学教授ミヒャエル・クヴァンテが、2000年から2020年にかけて公表した論文の中から16編を選んで、人格の同一性および自律を基礎論とする哲学・生命医療倫理学の学際的・異分野横断的な社会貢献の可能性を切り拓く自選論文集である。

三禮注疏訓讀(抄)

著者:野間文史(名誉教授)
発行所:明德出版社


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