私は、2023年 7月2日~7日にスコットランド・グラスゴーにて開催された 19th World Congress of Basic and Clinical Pharmacology 2023 (WCP2023) に参加しました。本学会は、四年に一度、世界中の薬理学者が一堂に会する学術集会です。その中で、大変光栄なことに、シンポジストとして“The emerging role of HMGB1 in the brain during chronic pain.”というタイトルで口頭発表を行いました。
私はこれまでに、 HMGB1 (High mobility group box-1)というタンパク質が、様々な難治性疼痛とその二次的な中枢神経症状を引き起こすことを見出しています。そこで、本シンポジウムにおいて、難治性疼痛に対する新たな創薬標的として HMGB1 の可能性を発表し、多くの研究者と有益な議論ができました。
また、本学会のオープニングセレモニーにて、スコットランドの伝統楽器であるバグパイプの演奏を観賞できたことも、とても良い思い出になりました。最後に、本学会へ参加するにあたり広島大学薬学部令和5年度若手研究者海外発表支援を頂きましたことを心より御礼申し上げます。
報告年度 | 氏名 | 職名 | 研究室名 | 国際学会名 |
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令和5年度 | 中村 庸輝 | 助教 | 薬効解析科学 | 19th World Congress of Basic and Clinical Pharmacology 2023 (WCP2023) |
令和4年度 | 中村 庸輝 | 助教 | 薬効解析科学 | Neuroscience 2022 |
令和元年度 | 川見 昌史 | 助教 | 医療薬剤学 | American Association of Pharmaceutical Sciences (AAPS)2019 PharmSci360 |
平成30年度 | 山野 喜 | 助教 | 生薬学 | The 18th Annual Oxford International Conference on the Science of Botanicals |
平成30年度 | 幾尾 真理子 | 助教 | 細胞分子生物学 | International Society for Extracellular Vesicles 2018 |
平成29年度 | 垰越 崇範 | 助教 | 病院薬剤学 | ASHP (American Society of Health-System Pharmacists)'s 52nd Midyear Clinical Meeting and Exhibition |
平成29年度 | 川見 昌史 | 助教 | 医療薬剤学 | 6th Pharmaceutical Sciences World Congress 2017 |
平成28年度 | 佐能 正剛 | 助教 | 生体機能分子動態学 | The 11th international ISSX (International Society for the Study of Xenobiotics)meeting |
中村 庸輝(助教 医系科学研究科 薬効解析科学)
中村 庸輝(助教 医系科学研究科 薬効解析科学)
私は、2022年11月12日~16日に米国カリフォルニア州サンディエゴにて開催されたNeuroscience 2022に参加しました。本学会は、世界中の研究者が一堂に会して、神経科学を熱く議論する世界最大級の学術集会です。その中で “Effect of intranasal treatment with the anti-HMGB1 neutralizing antibody on mechanical hypersensitivity in a mouse model of hemi-Parkinson’s disease” というタイトルでポスター発表を行いました。パーキンソン病の主症状は運動障害ですが、副症状として疼痛を呈し、生活の質を低下させる要因となります。私は、HMGB1 (High mobility group box-1)というタンパク質の機能を抑制することで、この疼痛症状が緩和されることを基礎研究から見出し、新たな疼痛緩和策として応用できる可能性を発表しました。
COVID-19 の流行以来、初の現地開催となりましたが、その規模は衰えておらず、各国の研究者と多くの有意義な議論を行うことができました。この経験を今後の自身の研究に活かしたいと思っております。
最後に、本学会の参加に広島大学薬学部令和4年度若手研究者海外発表支援を頂きましたことを心より御礼申し上げます。
川見 昌史(助教 医系科学研究科 医療薬剤学)
私は、2019年11月3-6日に米国テキサス州サンアントニオで開催された2019 American Association of Pharmaceutical Sciences (AAPS) PharmSci360に参加いたしました。本学会では、薬剤学の分野を中心に、多岐にわたるテーマや最新技術の話題がシンポジウムなどに組み込まれており、将来の創薬技術の発展に係る意義深い議論が展開されました。また、充実した企業ブースやAAPS主催のキャリアセミナーなどの様々な企画が実施されました。その中で私は、Potent inhibitory effect of vandetanib on methotrexate-induced epithelial-mesenchymal transition (EMT) in alveolar epithelial A549 cellsというタイトルでポスター発表を行いました。EMTは、細胞の形質が上皮様から間葉系へと変動する現象のことで、胚発生などの生理現象や組織の線維化およびがん細胞の転移能の獲得にも寄与します。今回私は、先端動物モデルプラットフォームから供与頂いた約350種類の化合物群の中から、vandetanibが強力なEMT抑制能を有していることを見出し、その特性およびEMT抑制メカニズムの一端について発表させていただきました。ポスター発表では、がんの転移に関する研究を行っている外国人研究者と多くの議論を行うことができ、自身の研究の課題や今後の展開などについて明確なvisionを得ることができました。本学会の参加に広島大学薬学部2019年度若手研究者海外発表支援を頂きましたことを心よりお礼申し上げます。
山野 喜(助教 医歯薬保健学研究科 薬科学講座 生薬学)
私は、2018年4月9日から12日に米国ミシシッピ州オックスフォードで開催されたThe 18th Annual Oxford International Conference on the Science of Botanicalsに参加しました。本学会は政府機関、メーカー、業界団体、アカデミア研究者が参加し、天然物や栄養補助食品の安全性評価、品質管理、成分分析などに関する活発な議論がなされました。
学会の中で私は”Isolation and mechanism analysis of anti-obesity substances from Wolfiporia extensa“というタイトルでポスター発表を行いました。本発表の内容は、生薬の一つである茯苓に脂肪蓄積抑制効果を見出し、その有効成分の単離構造解析、作用メカニズム解析を行ったというものです。示説の時間には様々な専門分野の方とディスカッションをすることができ、今後の研究の方向性に関して素晴らしいアドバイスを頂くこともできました。また学会プログラム中に、ミシシッピ大学の研究室や広大な植物園の見学をさせていただく機会があり、広大なキャンパスに圧倒されると共に、日本との教育・研究環境の違いを知ることができました。
また、現地の知人が開催するBBQパーティーに招いていただき、知人一家と他の招待者と共に外国の諸問題について話し合えたことも貴重な体験となりました。
本学会の参加に広島大学薬学部平成30年度若手研究者海外発表支援を頂きましたことを心より御礼申し上げます。
幾尾 真理子(助教 医歯薬保健学研究科 薬学講座 細胞分子生物学)
2018年5月2-6日にISEV2018(バルセロナ、スペイン)に参加し、ポスター発表 ”Extracellular vesicles derived from senescent cells repress tumor growth via miRNAs”を行いました。本学会の主題である細胞外小胞Extracellular vesiclesは、核酸やたんぱく質など種々の分子を含有するため新規細胞間情報伝達因子やマーカー候補として学術的・臨床的な注目を集めています。今回は、老化細胞がだすExtracellular vesiclesによってがん細胞の働きが抑制される機構に関して発表を行い、またシンポジウムにおける座長をつとめました。さらに初のアジア地域開催となる来年度ISEV2019 in 京都において、所属教室である広島大学医歯薬保健学研究科細胞分子生物学研究室の田原栄俊教授がChairとして中心的な役割を果たすため、私もISEV2019 International Organizing Committee memberとしてIOC meetingに参加し、世界及び日本のExtracellular vesicle研究を振興すべく活動いたしました。最後に、本学会の参加に広島大学薬学部平成30年度若手研究者海外発表支援を頂きましたことを心より御礼申し上げます。
垰越 崇範(助教 病院薬剤部(病院薬剤学研究室))
この度、若手研究者海外発表の支援をいただき、2017/12/3~7の期間で米国フロリダ州オーランドにて開催された第52回ASHP Midyear Clinical Meeting & Exhibitionにて発表を行いました。本学会はアメリカ病院薬剤師会が主催するもので、国外からも多くの薬剤師が参加する学会です。
私は、「小児造血幹細胞移植前処置におけるブスルファン血中濃度測定とAUC(血中濃度-時間曲線下面積)変動因子の探索」という演題で発表しました。造血幹細胞移植の前処置に使用されるブスルファンは、過少投与、過量投与を避けるために曝露量の評価が必要ですが、その指標として、主に血中濃度-時間曲線下面積(AUC)が用いられます。小児においては個体間・個体内変動が無視できず、得られたAUCから投与量を調節してもその後のAUCが目標値を外れる症例が認められています。この予測精度の向上を目的とし、AUC変動因子を解析したというものです。本内容は、学会側からも興味を持っていただき、初日に開催されたNetworking & Poster Sessionの小児科領域でも発表を依頼され、計2回のポスター発表を行いました。
また、薬剤部は米国のマーサー大学及びテネシー大学と交換留学の締結を結んでおり、毎年留学生を受け入れていますが、学会の会期中に各大学の学部長と会うこともでき、有意義な会となりました。
川見 昌史(助教 医歯薬保健学研究科 薬科学講座 医療薬剤学)
私は、2017年5月21-24日にスウェーデンのストックホルムで開催された6th Pharmaceutical Sciences World Congress 2017に参加し、”Modulation of P-glycoprotein function and sensitivity to anticancer drug by Azadirachta indica extract in multidrug resistant cell lines”というタイトルでポスター発表を行いました。膜タンパク質P-glycoprotein (P-gp)は、抗がん剤に対するがん細胞の耐性化に寄与しますが、今回私は、センダン科植物A. indicaのP-gp阻害活性を見出し、当該植物抽出物の抗がん剤耐性克服剤としての有用性について発表いたしました。その中で、P-gpや植物成分の研究に従事する方々と議論できたことや、各国の薬科学研究者、規制当局および医薬品産業関係者による医薬品創製・開発から適正使用、レギュラトリーサイエンスに至るまで幅広い分野における発表とディスカッションを聴講することができ、大変有意義な時間を過ごさせていただきました。さらにノーベル賞晩餐会が行われるストックホルム市庁舎でのレセプションは良い経験となりました。最後に、本学会の参加に広島大学薬学部平成29年度若手研究者海外発表支援を頂きましたことを心より御礼申し上げます。
佐能 正剛(助教 医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 生体機能分子動態学)
私は、2016年6月12日から16日に韓国プサンで開催されたThe 11th international ISSX (International Society for the Study of Xenobiotics)meetingに参加させていただきました。本学会では、国内外の製薬企業、アカデミア研究者が参加し、医薬品等の薬物動態(吸収・分布・代謝・排泄)に関して多くの演題発表と活発なディスカッションがなされました。その中で、私は、”Inhibitory effects of drugs on the metabolic activities of mouse and human aldehyde oxidase isoforms”という演題(ポスター発表)で、薬物代謝酵素のひとつaldehyde oxidase (AO)における医薬品の阻害様式や、種差に関する結果を発表させていただきました。今後、AOで代謝される医薬品は増えてくることが予想され、また、それを阻害する医薬品も多く存在することから、薬物間相互作用の観点で重要な知見となりうるのではないかと考えています。発表では、創薬やAOについて研究している国内外の多く研究者の方々とディスカッションさせていただきました。なお、本学会の参加におきまして、広島大学薬学部平成28年度若手研究者海外発表支援を受けました。このような機会をいただきましてありがとうございました。