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【研究成果】慢性蕁麻疹の病態に血液凝固反応が関与する機序を解明

本研究成果のポイント

  • 血管内皮細胞に微生物由来成分とヒスタミンが同時に作用すると、凝固反応を開始する組織因子の発現が相乗的に増加することがわかりました。
  • 血管内皮細胞上に高発現した組織因子は周囲の血液凝固反応を促進し、その過程で生じた活性化凝固因子が血管透過性(※1)を高めることがわかりました。
  • 血管内皮細胞の組織因子発現は生理活性物質(※2)であるアデノシンによって抑制されることがわかりました。
  • 血液凝固反応を制御する薬物やアデノシン類似物が慢性蕁麻疹の新しい治療薬として応用されることが期待されます。

概要

広島大学大学院医歯薬保健学研究科の柳瀬雄輝助教と秀道広教授らの研究グループは、慢性蕁麻疹の発症機序解明に関する研究を行いました。慢性蕁麻疹は明らかな誘因が無く、毎日膨疹が出没する疾患です。発症機序としては、皮膚組織内のマスト細胞からヒスタミンが遊離され、皮膚の微小血管内皮細胞に作用して膨疹が形成されると考えられていますが、その詳細は良く解っていません。

今回の研究では、慢性蕁麻疹の増悪因子として知られるLPS(リポポリサッカライド)(※3)等の微生物由来物質とヒスタミンが同時に血管内皮細胞に作用すると、別々に作用するよりずっと多くの組織因子が発現することを見出しました。また、高発現した組織因子は局所的な血液凝固反応を引き起こし、その過程で生じた活性化血液凝固因子により血管透過性が高まることを証明しました。さらに、この反応は生理活性物質であるアデノシンにより抑制されることも明らかにしました。

これまで血液凝固反応と皮膚アレルギー反応は切り離して考えられてきましたが、今回の研究結果から血液凝固異常とアレルギー反応の密接な関係を説明することができました。

本研究成果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」のオンライン版に、平成29年8月28日に掲載されました。

【用語解説】
※1 血管透過性:血管の内壁は血管内皮細胞が互いに結合してバリア構造を形成することにより、通常は細胞・血漿タンパク質等の物質は通過できない。一方で、炎症、腫瘍血管等の病的な状態になると、血管内皮細胞同士の結合が弱まり、血管外に血液成分が漏出して、炎症の増悪・浮腫・膨疹を生じる。

※2 生理活性物質:
生体に作用種々の生体反応を制御する物質のこと。例えばビタミンやミネラル、核酸、酵素など。

※3 LPS :グラム陰性桿菌細胞壁外膜の構成成分。免疫細胞等が発現するToll-like receptor に結合し、様々な生理活性を発現する。

論文情報

  • 題目:Histamine and TLR ligands synergistically induce endothelial-cell gap-formation by the extrinsic coagulating pathway
  • 著者:Yuhki Yanase, Satoshi Morioke, Kazumasa Iwamoto, Shunsuke Takahagi, Kazue Uchida, Tomoko Kawaguchi, Kaori Ishii, Izumi Hide, Michihiro Hide
  • 掲載誌:The Journal of Allergy and Clinical Immunology
  • DOI番号:http://dx.doi.org/10.1016/j.jaci.2017.07.026
【お問い合わせ先】

広島大学大学院医歯薬保健学研究科
助教 皮膚科学 柳瀬 雄輝

TEL:082-257-5237 FAX:082-257-5239
E-mail:yyanase*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)


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