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【研究成果】Kv11型電位依存性カリウムチャネルが神経細胞の膜電位のオシレーションに必須であることを解明

本研究成果のポイント

  • Kv11型電位依存性カリウムチャネルが、サイン波状の周期的な膜電位オシレーション(※1)を発生させる働きがあることを見出しました。
  • 脳の活動を反映する脳波などの発生機序の解明に貢献することが期待されます。

概要

人を含む生物の脳から電気活動を記録すると、θ波(4–8Hz)やα波(8–12Hz)など特性の周波数を持つ周期的な電気活動が計測されます。これらは「脳波」と呼ばれており、覚醒や睡眠のみならず、ある種の疾患などの脳の状態を反映する指標として病院での検査などに広く用いられています。一方で、脳波の発生機序については多くが不明のまま残されています。

この度、広島大学 大学院医系科学研究科の橋本浩一教授と松岡利典大学院生らの研究グループは、神経細胞や心筋細胞に発現するKv11型の電位依存性カリウムチャネルが、脳波の基盤と考えられている細胞の膜電位(※2)のオシレーションに関わることを見出しました。

研究の結果、Kv11チャネルは3つのサブタイプがありますが、それぞれ異なる周期のリズムを刻むことがわかりました。Kv11チャネルは脳の神経細胞のみならず心筋細胞などの体細胞にも発現しており、ある種の遺伝子疾患の原因遺伝子とも考えられています。本研究成果により、体の様々な部位でリズムの発生機序や病態の解明が進むことが期待されます。

本研究結果は、英国の生理学系雑誌「The Journal of Physiology(London)」に掲載されました。

Kv11チャネルを発現したHEK293細胞の膜電位オシレーション。
C,Dの右側の波形は、左側波形の黒線部分の拡大図。

用語解説

(※1) 膜電位オシレーション
膜電位が、静止状態において1~10Hzでサイン波状の周期的振動を示す現象。

(※2) 膜電位
細胞膜をはさんで細胞内外にかかる電位差。神経細胞が活動していない静止状態では、細胞内が細胞外に比べてマイナス方向になるように帯電している。

論文情報

  • 掲載誌: The Journal of Physiology
  • 論文タイトル: Kv11 (ether-à-go-go-related gene) voltage-dependent K+ channels promote resonance and oscillation of subthreshold membrane potentials
  • 著者名: 松岡利典1、山崎美和子2、阿部学3、松田由喜子4、森野豊之4、川上秀史4、崎村建司3
    渡辺雅彦2、橋本浩一1
    1. 広島大学 大学院医系科学研究科 神経生理学
    2. 北海道大学 医学研究院 解剖学分野
    3. 新潟大学 モデル動物開発分野
    4. 広島大学 原爆放射線医科学研究所 分子疫学
  • DOI: 10.1113/JP280342.
【お問い合わせ先】

<研究内容について>
広島大学 大学院医系研究科 神経生理学 
教授 橋本浩一
TEL: 082-257-5125
E-mail: hashik*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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