広島大学大学院医系科学研究科産婦人科 杉本 潤 助教、山﨑 友美 助教、工藤 美樹 教授、アメリカミズーリ大学産婦人科 Danny Schust 教授らのグループは、細胞融合を抑制するタンパク:サプレシンがトリソミー21を伴う胎盤で過剰に発現していることを発見し、これがダウン症候群で見られる未熟な胎盤形成の原因の一つである可能性を明らかにしました。
サプレシン遺伝子はヒト第21番染色体に座位し、胎盤形成に必須である細胞融合を抑制的に調整するタンパクであることが分かっています。一方、ヒト第21番染色体を1コピー余分に持つトリソミー21の胎盤では、正常核型の胎盤に比べ胎盤形成に異常が確認されることも報告されていました。
本研究では、ヒト第21番染色体に座位するサプレシン遺伝子が1染色体分増加することによりその発現量が増加し、胎盤形成を過剰に抑制することを明らかにしました。(下図参照)さらに、サプレシン特異的な新規のELISAアッセイ法を確立したことで、妊婦の母体血からもサプレシンタンパクを定量することが可能となりました。新規のダウン症候群予知マーカーとしての応用が期待されます。
本研究成果は、2022年6月22日にScientific Reportsオンライン版に掲載されました。