<詳細情報>奥居 正樹 (おくい まさき)

担当科目

経営情報システム論,経営システム科学

主要な研究業績

・「ナビゲーション経営と中小企業」『現代中小企業経営論』, 川上義明編著, 税務経理協会, (2006年)
・「米国におけるバランスト・スコアカードを用いた大学経営の取り組みに対する考察」
『経営教育と経営の新課題 (日本経営教育学会学会誌 第9巻)』, p87-108, 学文社、(2006年)
・「バランスト・スコアカードを用いた大学評価指標の策定とそれを支援する情報システムの構築」
愛媛大学教育開発センター・学生支援センター、『大学教育実践ジャーナル』、第3号、pp.1-17、(2005年)

自己PR

私は大学卒業後に、あるメーカーに勤務しましたが、日々の仕事の中で事業戦略に疑問を持ったことがきっかけで大学院に進学しました。この経験から得たことは、理論は修得するだけではなく、職務で応用してこそ知見が広がり、新たなアイデアを生み出せるということでした。このような理論と実務の融合を一人でも多くの人と共有できる機会を生み出す努力をしていきたいと思います。

私の研究分野は経営情報システム論、経営システム科学です。情報化については、多くの先行研究において、「情報システムそれ自体では、競争優位はもたらされない」という議論がなされています。そして、「情報化とは効率性を追求するだけではなく、蓄積された情報を基に知識(知恵)と事業システム(仕組み)を創出することが重要」と指摘されています。その認識の上に立って、経営情報をどのような評価指標を通じて収集するのか、また、「財務」「技術」「顧客」「ビジネスプロセス」「人材」等の因果連鎖のバランスを配慮してどのように意思決定を行うのか、といった経営戦略と情報システムとの連携性についてはさらに分析を進める必要があります。そこで、研究対象となる組織は企業に限らず、大学等の非営利機関も範囲に含め、組織におけるミッション(使命)と経営戦略の関係、そして経営戦略と情報システムとの連携性について分析を進め、実践的な研究教育を進めていきたいと考えています。

研究室紹介(研究テーマ、活動・業績)

本研究室では、企業や非営利組織の経営戦略をナビゲートするために必要となる経営情報と、これらの情報を組織内で蓄積・共有するための経営情報システムに関する研究を行っています。

たとえば、車のナビゲーションシステムは位置情報や渋滞情報を勘案して、目的地への最短ルートをリアルタイムでドライバーに指示することによって目的地へ効率的に誘導するのと同じように、組織は自らを取り巻く事業環境の変化や経営戦略の進捗状況といった経営に関わる情報を収集し、その情報を分析しながら経営戦略で定めた目標を達成するための道筋を修正することが必要となります。そこで、本研究室ではバランスト・スコアカード(BSC)に着目し、経営指標を用いた経営戦略の可視化とその有効性について調査・研究を行います。BSCでは経営戦略を実現するために達成すべき戦略目標を4つの視点(財務・顧客・業務プロセス・成長と学習)から整理し、戦略目標間の因果関係を明らかにしたうえで経営戦略を実現するためのシナリオとなる戦略マップを描きます。そして、目標に応じた経営指標を設定して、それを時系列で分析することによって戦略上の課題や改善点を浮き彫りにし、新たな経営戦略に反映させていきます。つまり、BSCは経営戦略を実現するためのツールなのですが、この導入事例、特に中小企業や非営利組織における事例を中心に調査研究を行っています。特にBSCを導入する段階と導入後のレベルアップ時に発生する、運用に対する成熟度の問題とその解決方法に関心を持っています。

また、このような経営指標は経営情報システムによって収集・蓄積されていきます。企業等は情報の共有や業務のさらなる効率化のため、経営情報システムを一定の間隔で導入・更新しています。しかし、経営情報システム自体は利益を生み出すことがないコストセンターであり、システムを導入・更新することがすぐさま経営上の優位性に直結するものではありません。情報収集だけではなく蓄積した情報を分析するなど、収集した経営情報や情報システムの「使いこなし」に対する習熟度を上げることが競争優位性の源泉にあると考えられます。つまり、収集したデータから経営戦略上の問題意識をどのように紡ぎ出すか、そしてその問題意識に対する解決方法を具体的な行動に結びつけることが鍵となります。これによって戦略目標を達成するために仮説検証を繰り返す組織体制が構築されていきますが、この底流には経営情報に対する成熟度を段階的に引き上げていく計画が必要と考えられます。しかし、一般的にこのような経営情報システムは、導入時点での単発プロジェクトとして対応されることが多いのが現実です。システムの運用時においては別の実務部門が担当し、経営情報の「使いこなし」を段階的にステップアップさせるための中長期的な計画に基づいて検討されることは多くありません。そこで、本研究室では、経営情報システムを導入するユーザーの視点から、経営情報の「使いこなし」に焦点をあて、中長期的な視点から経営情報システムのプロジェクト管理のあり方について調査・研究を進めています。

□主な研究テーマ
・BSC(バランスト・スコアカード)による経営戦略を支援するマネジメントシステムに関する研究
・「成熟化」に着目した戦略的経営の枠組みにおけるプロジェクト管理に関する研究
・国立大学の大学情報システム構築におけるプロジェクト管理に関する研究
・国立大学における教員評価制度の導入におけるプロジェクト管理に関する研究
・経営品質の向上に資する経営情報の評価基準に関する研究

□所属学会
・日本経営学会
・経営情報学会
・日本経営教育学会
・プロジェクトマネジメント学会
・日本高等教育学会
・工業経営研究学会

ゼミ教育方針(教育目標、基本方針)

経営戦略に重点を置き、その実行に必要となる経営情報についてリサーチを行っていきたいと考えています。皆さんが職場等でお持ちになっている経営戦略に関する問題、特に実行面における問題について、その背景にある学説的研究を基に深く掘り下げながら、実践的な研究を行っていきたいと思います。

経営情報システムとは、価値創造のための「仕組み」を構成する1つの要素に過ぎず、競争優位を獲得するには、価値創造の「仕組み」のなかにどのように組み込み、どのように利用して、どのように発展させるかということが課題となります。そこで「仕組み」をキーワードとした多面的な研究・教育を行っていきたいと考えています。

入学者へのメッセージ

皆さんが企業等で直面する経営課題や解決方法が見つからないといった問題意識を持つことが大学院進学の糸口となります。たとえ情報を豊富に収集しても、問題意識がなければその情報は文字や数字の羅列に過ぎず、行動に結びつくことはありません。ですから、自分自身でまず問題意識を醸成してください。そして、その答えをまずご自身でインターネットや文献を通じて調べてください。すると、解決策が見つかるかもしれませんが、それを実行するには新たな課題を解決することが求められたり、既存の問題が解決した後に新たな課題に直面することになると思います。このように、問題意識の醸成?実行?学習という循環的なサイクルを通じて知識が蓄積されていきます。そして、このような課題を自らの力で乗り越えることに知的興奮を覚えるならば、大学院での時間はきっとお金では買えない価値をもたらすことになると思います。

私自身の経験では、社会人として職務と学業との両立は大変厳しいものでした。しかし、大学院で習得した知識を組み合わせて実務に反映させて、従来成し得なかったことが達成できる喜びは計り知れないものでした。大学院での研究・教育を通じて、皆さん自身がバリュープロポジション(独自の価値提供)を磨く機会としてマネジメント専攻の門をたたくことを期待しています。


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