<詳細情報>盧 濤 (ろ とう)

担当科目

異文化コミュニケーション論,異文化ビジネスコミュニケーション

主要な研究業績

・「“文化”考」『中国語学』(日本中国語学会)249号(2002年)。
・「説“朋友”」『中国語学』(日本中国語学会)248号(2001年)。
・『中国語における「空間動詞」の文法化研究―日本語と英語との関連で―』白帝社(2000年)。
・「『給』の機能語化について」『中国語学』(日本中国語学会)240号(1993年)。
・「アジアで信頼される国となるために何をなすべきか」『全国青年・院生国際問題論文コンクール入賞者論文集』外務省・外交協会(1992年)。

自己PR

経歴:中国で生まれ育ち,日本で「大人」になったorなりつつある,中国人。詳しく紹介すると,中国で日本語を4年間習い,5年間教えた後来日し,関西の大学で8年半学び,九州で2年半教え,98年10月から広島大学奉職。

趣味その他:趣味が少ない。言わば無味乾燥な人間だが,言葉に敏感な体質だけが自慢だ。日本語に拘っており,外国人のくせに,変な日本語を耳にすると,自分勝手に不愉快になる。

授業:異文化交渉学の学際的,総合的性格に鑑み,関連する学問分野の基本文献を読みながら,基礎概念を確認し把握することを通して,異文化交渉の実践的訓練のみならず,異文化交渉の理論的構築の糸口として,研究範囲の把握・認識または問題提起の手がかりを提供することを目指している。講義を活性化させるために,必ず課題をメールの形で提出してもらい,それについてのコメントを受講者全員に送信し,議論してもらい,更なる意見交換をさせながら,双方向・多方向のコミュニケーションを図る。

研究室紹介

盧研究室(文化・交渉プログラム)では、文化、言語、コミュニケーション、交渉、ビジネスをキーワードに掲げ、異文化交渉及び異文化コミュニケーションに関する研究を学際的、総合的に行っています。

下にリストアップした研究活動の一覧に示したとおり、目下、私自身は主に4つの分野に関心を持っており、マネジメント専攻、特に文化・交渉プログラム在籍生の皆さんと議論しながら、関連する分析の作業を進めています。

(1)異文化どうしの「交渉観」の把握。交渉観の把握は異文化交渉の基礎的作業であり、その手掛かりとして、交渉と深く関連する概念の形成史を調べています。例えば、中国語における「文化」、「面子」、「交渉」、「友人」、「契約」といった概念を取り上げて、それらの語彙の形成に見られる中国人の交渉の見方を捉えようとします。

(2)異文化認識の分析。異文化への見方は異文化どうしの交渉行動を左右するものであって、異文化交渉を論ずるにあたり、異文化認識を抜きにしては語れません。日本人はどのように異文化を見ているのか、あるいは外国人はどのように日本文化を見ているのかを分析して、その相互認識の有り様から異文化どうしの可能な交渉パターンを予測すると同時に、文化と交渉の相関関係を追求しています。

(3)コミュニケーションの研究。交渉はコミュニケーションの一形態に過ぎず、異文化交渉も異文化コミュニケーションの一環に過ぎません。ビジネスコミュニケーションを含めた、コミュニケーション、異文化コミュニケーションについての調査研究を展開中です。そして、関連分野の先行研究を把握する作業も同時進行中です。

(4)異文化交渉の考究。以上のような関連分野の研究を踏まえ、交渉の一般的な原理、構造とプロセスに関する文献を読みながら、基礎概念を確認しつつ、異文化交渉の実践的訓練の場のみならず、異文化交渉の理論的構築の糸口、そして研究範囲の把握・認識または問題提起の手がかりを提供することを目指しています。それと共に日中交渉や日米交渉をケースにして、異文化交渉の研究を深めています。

2000年以降の公刊論文及び口頭発表の一部をあげると、以下のようなものがあります。
・「面子」の隠喩(『言語文化研究』第26巻(広島大学))
・説"朋友"(『中国語学』248号(日本中国語学会))
・"文化"考(『中国語学』249号(日本中国語学会))
・釈"合同"(『中国語学』251号(日本中国語学会))
・反情報化の考え方(『情報化社会への招待』(学術図書出版))
・日本人学生の見た異文化(『日本語言文化研究』第2集(大連理工大学出版社))
・日本人学生の中国の見方(『マネジメント研究』第6号(広島大学))
・日本における異文化コミュニケーション研究の歴史と現状(2006清華大学日本言語文化国際フォーラム)
・日中ビジネスコミュニケーション研究の現状と課題(第4回中日韓文化教育研究フォーラム)
・日本人学生のコミュニケーションの捉え方(2006北京大学日本学研究国際シンポジウム)
なお、所属学会は以下のとおりです。
日本言語学会 日本中国語学会 日本語学会 日中コミュニケーション研究会

ゼミ教育方針

これまで指導した修士論文は、「中国人留学生就労者に関する調査研究」、「商業都市の構造と市民意識」、「中国人留学生の受入れに関する研究」、「中国進出日系企業における異文化理解」という題目のように、教員の研究テーマとやや異なる分野のものが多かったです。ゼミ生の皆さんの意思を尊重して、自由闊達なゼミの雰囲気で研究生活を楽しんでいきたいと思います。

それから、ゼミと講義を活性化させるために、必ず課題をメールの形で提出してもらい、それについてのコメントを参加者全員に送信し、議論してもらい、更なる意見交換をさせます。いわば双方向・多方向のコミュニケーションを図る方針で、教育活動を行います。

入学者へのメッセージ

2つのことばを引用して入学者の皆さんと共有したいと思います。

1つは、物理学者の西澤潤一先生がインタビューに答えた時のことばです。Originality comes from understanding, not from information.(Newsweek/August12.1985, p.36)情報化社会といわれるように、我々は日々情報の収集に追われています。研究生活を送っている大学院生の皆さんも何らかの形で情報を集めては、「自己武装」することを強いられていると思います。しかし、本当の研究は、情報からではなく、「理解」から生まれるものだと私は信じています。皆さんには、ぜひ自分なりの理解に基づき、研究テーマに取り組んでいただきたいと思います。

それから哲学者の黒崎政男氏のことばです。「情報を見きわめる判断力や、断片的知識の寄せ集めから統一的な意味を見出す洞察力を身につける(のが教育の目標)。」(「大学制度 揺さぶるネット」『朝日新聞』2001年5月2日)これは、上と似たような主張ですが、マスコミにも教授の学説にも惑わされず、自分の生活経験や実務経験、学習経験から生まれた判断力、洞察力を頼りに物事を見て、自分の言説を立てていただきたいと思います。


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