本研究成果のポイント
〇制御システム運用において、プライバシー保護レベルを数理的に評価
〇プライバシー保護レベルを調整可能にする制御アルゴリズムの開発
〇システム運用効率とプライバシー保護レベルのトレードオフを解析
概 要
電力ネットワークのように、運用状況が時々刻々と変化する「制御システム」においては、あらゆる情報をネットワークで瞬時に共有することが、運用効率の飛躍的な向上に繋がる。その一方で、共有した情報からユーザーの家電使用状況・在宅状況などのプライバシー情報が漏洩するリスクも伴う。
そこで本研究では、プライバシー保護という新たな視点を制御アルゴリズム開発に導入し、運用効率とプライバシー保護レベルを調和する制御システム運用へと挑戦している。 制御システム特有のプライバシー問題として、共有される情報の時間履歴を上手く繋ぎ合わせると、プライバシー情報の特定が可能となる危険性を孕む。このような危険性の度合い、すなわち「プライバシー保護レベル」を数理的に評価することに、システム制御と情報科学の知見を融合することで成功した。プライバシー保護レベルが制御システムの運用方法に依存することに着目し、保護レベルを調整可能にする制御アルゴリズムの開発を実現した。
一般に、制御システムの運用効率とプライバシー保護レベルはトレードオフの関係にある。これに基づいて、要求された制御性能下で到達可能な「プライバシー保護レベルの限界」を解明した。本成果は、IoT化が進む制御システム運用において、プライバシー漏洩リスクを管理する基盤技術としての発展が期待される。

【論文情報】
https://doi.org/10.1109/TAC.2020.2994030
https://doi.org/10.1016/j.automatica.2021.109518
https://doi.org/10.1016/j.automatica.2021.109732