酸素発生型光合成によってマンガン酸化が起きる条件を解明

本研究成果のポイント

〇北海道オンネトー湯の滝では温泉水のpHが比較的低いため、緑藻による光合成ではマンガン酸化が促進されていないことが明らかとなった。

〇先カンブリア時代の海洋も同様にpHが低かったため、マンガン酸化物形成における光合成の影響は限定的であった可能性が高い。

概  要

天然におけるマンガン酸化物形成において、微生物が重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。北海道のオンネトー湯の滝で形成されているマンガン酸化物に関しても、マンガン酸化菌が酸化反応を担っており、それがさらに藻類の放出する酸素などによって促進されると推定されていたが、実際の沈殿反応は不明であった。

そこで本研究は、バルク水化学分析やDNA解析に加えて、微小電極による局所的な水化学分析も適用することにより、マンガン酸化における光合成の寄与を評価した。検討を行った沈殿物表面は、シアノバクテリア、藻類、マンガン酸化菌などによる厚い微生物マットで覆われていた。酸化物表面近傍における微小電極測定では、pHとO2濃度が酸素発生型光合成と好気呼吸に特徴的なプロファイルを示した。

一方、Mn濃度は明条件・暗条件ともにほぼ同じプロファイルであり、マット表面・内部で低下した。これは活発な光合成にも関わらず、バルク温泉水のpHの低さのためにマンガンの酸化反応が光合成によって促進されていないことを示しており、この試料ではマンガン酸化菌による酸化が卓越していると考えられる。

 

【論文情報】

Shiraishi F., Chihara R., Tanimoto R., Tanaka K., Takahashi Y. (2022) Microbial influences on manganese deposit formation at Yunotaki Fall, Japan. Island Arc 31, e12448.


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