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【研究成果】睡眠の質と月経周辺期症状に関連があることを指摘しました 〜多くの女性を悩ませる症状の改善に向けて〜

本研究成果のポイント

  • 国内女子学生を対象に、睡眠の質と月経周辺期症状の重症度の関連を調査した結果、これらの間には関連があることが分かりました。
  • 月経周辺期症状の改善策を考えるうえで一助となります。

概要

  • 国内女子学生850人を対象に、オンラインアンケート調査を実施し、睡眠の質を評価するピッツバーグ睡眠質問票と、月経前・月経中・月経後の3時期について月経周辺期症状の重症度を評価するMenstrual Distress Questionnaire (MDQ)の質問票を聴取しました。
  • 有効回答の得られた298人の対象を睡眠の質正常群と低下群の2群に分けてMDQの得点を比較した結果、睡眠の質低下群で月経周辺期症状の重症度が高いことがわかりました。
  • 多様な月経周辺期症状の中でも、どの症状が睡眠の質と関連が強いかを調べた結果、月経前と月経後の「集中力」と、月経中の「痛み」との関連が強いことがわかりました。
  • 本研究成果は2025年2月6日に「BMJ Open」に掲載されました。
  • 本研究は広島大学から論文掲載料の助成を受けました。

論文に関する詳細情報

論文名:Effect of sleep quality on the severity of perimenstrual symptoms in Japanese female students: A cross-sectional, online survey
著者:小田さくら1、前田慶明1、田城 翼1*、水田良実1、小宮 諒2、有馬知志1、永澤貴昭3、内藤紘一4、浦邉幸夫1
1. 広島大学 大学院医系科学研究科 総合健康科学
2. 新潟医療福祉大学 運動機能医科学研究所
3. 和洋女子大学 家政学部 健康栄養学科
4. 名古屋女子大学 医療科学部 理学療法学科
* 責任著者
掲載雑誌:BMJ Open(Q1)
DOI:10.1136/bmjopen-2024-093197

背景

 月経の前後にあらわれる下腹部痛やイライラなどの多様な症状のことを月経周辺期症状といい、女性の約9割が経験するといわれています。これらは、単なる身体的・精神的な苦痛だけでなく、例えば学生であれば授業を欠席せざるを得なくなり学業成績が低下するなど、社会的な影響も受けることから、女性にとって重大な健康問題です。
 月経周辺期症状の軽減策の一つとして、生活習慣の見直しは一定の効果があるとされています。そのなかでも、睡眠時間が短い者は月経痛(月経に伴い現れる子宮由来の痛み)の重症度が高いことがこれまでの研究で分かっており、十分な睡眠をとることが月経周辺期症状の改善に寄与すると考えられています。しかし、月経周辺期症状と睡眠の関係を十分に検討するには、単なる睡眠時間の長さだけでなく、睡眠の質にも着目する必要があると考えられますが、睡眠の質と月経周辺期症状の重症度の関係を調査した研究は不足しています。そこで本研究では、月経周辺期症状の軽減策を提案するための基礎的なデータを提供することを目的とし、国内女子学生を対象に睡眠の質と月経周辺期症状の重症度の関係を調査しました。
 

研究成果の内容

 本研究では、国内の18歳〜25歳の女子学生850人を対象にGoogle formsを用いたオンラインアンケート調査を実施しました。アンケートの主な調査項目は、ピッツバーグ睡眠質問票とMDQとしました。ピッツバーグ睡眠質問票とは、入眠までの時間や夜中に覚醒する頻度など、7つの項目を0~3点で採点し、その合計点で総合的な睡眠の質を評価する質問票です。一方MDQとは、多様な月経周辺期症状を「痛み」・「水分貯留」・「自律神経」・「否定的感情」・「集中力」・「行動変容」の下位尺度に分類し、それぞれを0~4点で採点する質問票です。
 ピッツバーグ睡眠質問票の回答結果をもとに、対象を睡眠の質正常群と低下群の2群に分類し、MDQの得点を月経前・月経中・月経後の3時期で比較することで、睡眠の質と月経周辺期症状重症度の関連を確認しました。またその後、多様な月経周辺期症状の中でも特にどの症状が睡眠の質と関連が強いのかを検証しました。
 850人にアンケートを配布し、366人から回答が得られました。その後、ホルモン調整剤を服用している者や婦人科系および精神系疾患の既往がある者など除外基準に該当する者を除外した298人のうち、160人が睡眠の質正常群に、138人が睡眠の質低下群に分類されました。
 睡眠の質正常群と睡眠の質低下群でMDQの得点を比較した結果、月経前・月経中・月経後のすべての時期において、睡眠の質低下群ではMDQの得点が高く、月経周辺期症状の重症度が高いことを示しました。また、月経周辺期症状の中でも月経前・月経後の「集中力」と月経中の「痛み」が特に睡眠の質と関連していることがわかりました。
 以上のことから、国内女子学生の睡眠の質と月経周辺期症状の間には関連がみられ、特に月経前・月経後の「集中力」や月経中の「痛み」といった症状との関連が明らかとなりました。
 

今後の展開

 本研究は、睡眠の質と月経周辺期症状が関連することを示しました。また多様な月経周辺期症状の中でもどの症状が睡眠の質と関連が強いかどうかを検証することで、より詳細に睡眠の質と月経周辺期症状の関係に関する知見を提供することができました。今回得られた知見を基に、今後は介入研究により睡眠の質と月経周辺期症状の因果関係を探っていくなど、月経周辺期症状を軽減させるための貴重な研究成果を発信できるよう今後も研究活動を進めていきます。

図1 本研究の回答数、除外者の内訳と各群の人数

図2 睡眠の質正常群と睡眠の質低下群における月経周期ごとのMDQ得点の比較:(a)月経周期ごとのMDQ合計得点の比較、(b)月経前のMDQ下位尺度得点の比較、(c)月経中のMDQ下位尺度得点の比較、(d)月経後のMDQ下位尺度得点の比較

【お問い合わせ先】

<研究に関するお問い合わせ先> 
広島大学大学院医系科学研究科 スポーツリハビリテーション学 大学院生 小田さくら
Tel:082-257-5413
E-mail:sakura-oda1213@hiroshima-u.ac.jp

広島大学大学院医系科学研究科 スポーツリハビリテーション学 准教授 前田慶明
Tel:082-257-5410
E-mail:norimmi@hiroshima-u.ac.jp
 


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