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木戸 隆之祐 准教授にインタビュー!

地盤となる土の力学挙動、構造物と土の相互作用などの研究

土の内部を可視化するX線CT解析

当研究室では建物やインフラを支える地盤となる土が、外から力を与えられるとどうなるのか、土と構造物がどう相互作用して安定しているのか、といったことを研究しています。土砂災害、地割れ、地盤の液状化、道路の陥没など、近年は土に関する多くの災害が起こっていますが、その際土粒子の一粒ずつがどのように動いているのか、ひいてはそのメカニズム全体について、一般にはほとんど知られていません。地盤内部で何が起こっているのかを知るためにはまず観察を行う必要があり、内部の状態を保存したまま可視化するために私はX線CTという装置を使っています。

X線CTで撮影された画像は健康診断のレントゲン写真のようなイメージに近く、密度の高いところが白、低いところが黒で表されます。
実験では土を薄いゴム膜に詰め、周りから空気圧をかけて圧縮することで実際の地盤と同じような状態を作り出します。そこに外力を加え土が崩れると、まるで物体に亀裂が入るのと同じように、すべり面という集中的に変形する領域が発生します。それをX線CTで撮影し、土粒子一粒ずつがどう挙動して土全体の強度や変形に寄与するのかを調べています。 
一般的な土は土粒子・金属の破片・水・空気で構成されていますが、私の研究の特徴は水の量と分布に注目している点にあります。土粒子間には水がピタッとくっついていて、この水にサクションという引っ張る力が働くことで土の強度を高めていると言われており、私はこの水(液架橋)の分布量が土全体の強度に影響するのではないかと考えました。実際に、土に外力を加えて強度が落ちたところをX線CTで撮影して画像解析してみると、サクションが小さくなり、水の分布量も減少しているということがわかりました。

建物を支える地盤の条件

建物は地中に打ち込まれた基礎杭によって荷重を支えています。地表面から数十メートルほど下には非常に硬い層があり、そこに杭の先端を到達させれば建物が重くても支えられるという前提があるのです。しかし、数十メートルの杭をまっすぐ打ち込むのは難易度が高く、かつコストもかかるため、中間的なところにある硬い層でも安全を保ちながら建物の荷重を支えることができないかと考えました。それが可能になれば杭自体が短くて済み、コスト削減だけでなく施工期間の短縮にも繋がります。

ここで重要なのは硬い層の厚みです。もし硬い層が薄ければ、その下にある軟らかい層にまで影響が及んで沈下してしまう可能性があります。そこで、どれほどの厚みがあれば良いのかを求める実験を行いました。従来は、杭径の3倍の厚みがあれば十分ではないかと言われていましたが、あくまでも数値解析による結果にとどまっていました。また、杭に荷重がかかると、杭先端部に触れている地盤は球根状に変形すると理論上は解明されていましたが、それもX線CTを利用して確認しました。
試料として用意したのは、①杭径の3倍以上硬い層があ

る地盤、②杭径の3倍硬い層がある地盤、③硬い層が薄い地盤、④軟らかい砂の地盤、の4つです。X線CTの画像を確認すると、杭に荷重がかかった時点で杭直下の地盤が逆三角形状に密度を高め、この傾向は硬い層が厚いほど顕著であるとわかりました。そこから杭を下へ下へと押し込んで地盤の変形を確認すると、①②は硬い層の範囲内で影響が収まっている反面、③④は軟らかい層にも影響が及んでおり、反力が取れなくなることで支持力が下がるとわかりました。結果、従来言われてきた通り杭径の3倍硬い層があれば安全だと実証でき、薄層になると支持力が低下するメカニズムも解明することができました。

わからないことを突き詰める面白さ

研究で使う土は基本的には購入しているのですが、災害現場に足を運んで現地のものを採取することもあり、現場から得られる情報に新たな疑問が湧き上がって土への理解がさらに深まります。反対に研究室で解析をしているときは、予測と合っているか、違ったらなぜそうなったのかを考えるのが楽しく現場とは違う魅力があります。

私が行っているのは非常に基礎的な研究で、すぐに社会実装されるような内容ではありません。しかし、土の中で何が起きているのかを解明することで最初に述べたような災害のメカニズムについて、より理解を深めることができるのではないかと考えています。研究のモチベーションになっているのは、よくわからないものを突き詰めて、わかるようになりたいという思いです。学部生のころから土質力学の授業は好きで、当時よくわからないながら先輩の卒業論文発表会の内容に「面白い」と興奮したことを覚えています。現在も自分が面白そうだと感じるものを研究することは大切

にしており、新規性とオリジナリティを意識しながら難しそうなことに挑戦する姿勢を心がけています。  修士課程のころ、私は2ヶ月ほどフランスに滞在し、当時の指導教員の研究を手伝ったという経験があります。お世話になった研究機関はX線CTを利用して地盤材料を可視化する研究の先駆け的なところで、そこに所属する研究者と同じテーマで教員がディスカッションしているのを見て、非常に刺激を受けました。異なる言語や文化に触れると様々な感覚が洗練されますし、広い交友関係で世界と繋がることができ、こうした生き方を私は豊かだと感じます。広島大学への進学を考えている方は、入学後でも良いのでぜひ異文化に触れる機会を作ってみてください。また、試行錯誤を繰り返し、疑問を突き詰めていく姿勢を大切にしてください。時には遠回りに思えることが近道ということもあり、世の中の役に立つ知見や重要な何かはそうした姿勢から生まれてくるはずです。


木戸 隆之祐 准教授
RYUNOSUKE KIDO
地盤工学研究室

2014年3月 京都大学工学部 地球工学科 卒業
2016年3月 京都大学 大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 修了
2017年4月 日本学術振興会 特別研究員DC2(京都大学)
2019年3月 京都大学 大学院工学研究科 博士後期課程 社会基盤工学専攻 修了
2019年4月 京都大学 大学院工学研究科 助教
2024年4月 広島大学 大学院先進理工系科学研究科 准教授


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