本研究成果のポイント
〇暗黒物質候補となり得るアクシオン等の軽い未知素粒子の国際共同探索を始動。
〇2色の強力なレーザーを真空中で混合集光して軽い未知素粒子を直接探索する手法の実現可能性とその拡張性を、実験室の探索系で示した。
概 要
SAPPHIRES国際共同実験[1] (本論文では、広島大学大学院先進理工系科学研究科の本間謙輔准教授と桐田勇利大学院生が共同筆頭著者)は、現代宇宙物理学における最大級の謎である暗黒物質の源となり得るアクシオン[2]等の未知素粒子を、2波長の光波から成る強力なレーザー(緑:生成光、赤:誘導光)を真空中で混ぜ合わせ、未知素粒子を介した散乱(青:信号光)を誘導することにより、直接的にそれらを生成・崩壊させる探索実験を始動し、その探索結果を公表しました。
真空容器内圧力が大気圧の10万分の1以下では最大の背景事象である容器内残余原子からの寄与が消え失せ、それよりも更に低い圧力では、信号光が見えない観測結果を得ました。したがって、今回の探索では、未知粒子の介在は確認されませんでした。
この結果に基づき、未知粒子の質量と結合に対して棄却領域を求めました。本探索は潜在的な背景事象を理解、定量化するための予備的探索に相当し、今後のレーザーパルスの高強度化により感度が飛躍的に向上することが期待されます。
【論文情報】 本研究の成果は、欧州の科学雑誌「Journal of High Energy Physics」に 2021年12月16日に掲載されました。
論文タイトル:
Search for sub-eV axion-like resonance states via stimulated quasi-parallel laser collisions with the parameterization including fully asymmetric collisional geometry
著者名:
Kensuke Homma*1, Yuri Kirita*1, Masaki Hashida*2,*3, Yusuke Hirahara*1, Shunsuke Inoue*2,*3, Fumiya Ishibashi*1, Yoshihide Nakamiya*4, Liviu Neagu*4,*5, Akihide Nobuhiro*1, Takaya Ozaki*1, Madalin-Mihai Rosu*4, Shuji Sakabe*2,*3, Ovidiu Tesileanu*4
所 属:
1. Graduate School of Advanced Science and Engineering, Hiroshima University, Kagamiyama, Higashi-Hiroshima, 739-8526, Japan 2. Institute for Chemical Research, Kyoto University, Uji, Kyoto, 611-0011, Japan 3. Graduate School of Science, Kyoto University, Sakyouku, Kyoto, 606-8502, Japan 4. Extreme Light Infrastructure-Nuclear Physics (ELI-NP) and Horia Hulubei National Institute for R&D in Physics and Nuclear Engineering (IFIN-HH), 30 Reactorului St., P.O. Box MG-6, RO-077125, Bucharest-Magurele, Judetul Ilfov, Romania 5. National Institute for Laser, Plasma and Radiation Physics, 409 Atomistilor, P.O. Box MG-36, 077125, Magurele, Judetul Ilfov, Romania DOI: 10.1007/JHEP12(2021)108