電気回路の中の宇宙 ―ホーキング輻射を捕まえろ-

本研究成果のポイント

非線形LC回路において、新しいタイプの電流ならびに電圧ソリトンの存在を発見するとともにそのソリトンが擬似的なブラックホールとして振舞うことを明らかにした。

この電気回路にある擬似的ブラックホールを用いると、現実にあるブラックホールでは観測困難なホーキング輻射を観測できることがわかった。

擬似的ブラックホールと擬似的ホワイトホールを用いたブラックホール・レーザー理論の構築に成功した。これにより、微弱なホーキング輻射は更に増強され、観測が容易になる。

 

概  要

一般相対性理論と量子力学の統一には、それらが出会う稀有な現象であるホーキング輻射の観測が鍵となる。しかし、ホーキング輻射は極めて小さく、観測は困難である。そこで、実験室系で擬似的ブラックホールを作り、ホーキング温度を観測可能にする試みがなされてきた。

電気回路では、電磁波速度を決定する回路パラメータに空間依存性を導入することによって、擬似的ブラックホールの創生が可能である。しかし、回路パラメータの制御性に問題があった。そこで、我々は回路中を安定に伝播するソリトンを外場として用いた新しい制御方法を考案した。我々の新しい回路には、新種の電流と電圧ソリトンが存在し、これらが回路パラメータを通して電磁波を空間的に変調し、擬似的ブラックホールを創生することを明らかにした。そして、ホーキング温度が、観測可能な温度領域であることがわかった。(図1参照)

次に、ホーキング輻射の更なる増幅のために、ブラックホール・レーザーの創生に取り組んだ。これまで、異常分散を持たない電気回路では、不可能とされてきた。そこで、メタマテリアル要素による分散関係を制御することによって、ソリトン自身が共振器として働くことを明らかにした。これにより、粒子・ 反粒子モードが、ソリトン内を反復し、非線形モード変換によりホーキング輻射が指数関数的に増幅されることが明らかとなり、電気回路で初めて、ブラックホール・レーザーの理論構築に成功した。(図2参照)

図1

図1

図2

図2


up