本研究成果のポイント
〇中国地方を含む国内外で毎年大量に発生する石粉の再利用促進を目的とし、建設工事(地盤改良)への活用に着目した。
〇花崗岩および石灰岩由来の石粉を混合したセメント改良土を対象とし、強度発現特性などの物性特性を明らかにすることを目的とした室内試験を実施した。
〇検討の結果から、花崗岩および石灰石由来の石粉を混合したセメント改良土はセメント使用量の削減はもちろん、社会経済および環境への影響低減が期待できることが明らかとなった。
概 要
建設産業は世界の原材料の約24%を使用する一大産業であるとともに、CO2排出量の約11%を排出するとされる。このCO2排出量の内訳において、約8%がセメント産業由来とされており社会経済・環境に与える影響の低減に向けた検討が進められている。現状、セメントを部分的に鉄鋼スラグ、フライアッシュ等に置き換えた材料が提案され実務で用いられているが、さらなる低減に取り組む必要がある。その中で、解体工事や装飾品の加工に伴い大量に廃棄されている石粉に着目した。
これまでの検討から、広島県を含む中国地方で大量に排出される花崗岩由来の石粉は粒径により地盤材料として再利用する際の特性が異なることが明らかとなっている。本論文では、花崗岩に加えて石灰岩についても同様の試験を行い、由来の異なる石粉を混合した地盤材料の物理特性および社会系経済・環境に与える影響について検討した結果を報告している。試験の結果から、石灰岩由来の石粉は花崗岩由来の石粉とは異なり粒径による強度増進効果は期待できないものの、初期強度増進に寄与することが明らかとなった。
これにより、花崗岩および石灰岩由来の石粉を混合した地盤材料は、セメント添加用および加水量の削減効果が期待でき建設分野由来の社会経済及び環境への影響を低減する効果が期待できる。
論文情報
Nakayenga, J., Inui, M., Guharay, A., Hata, T.*: Effect of limestone and granite stone powder on properties of cement-treated clay composites and their socioeconomic and environmental impacts.
CONSTRUCTION AND BUILDING MATERIALS, 393,132064.
10.1016/j.conbuildmat.2023.132064 AUG 2023.