機械学習による繊維状エアフィルター微細構造内の粒子流体挙動の予測

本研究成果のポイント

〇畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を代理モデルとした機械学習により、エアフィルター微細構造内の流れ場およびサブミクロン粒子の挙動を予測した。

〇CNNに用いる訓練データセットに、数値流体力学(CFD)シミュレーションにより得られた流れ場のパラメータを用いた。

〇CNNにより予測された流れ場は、CFDシミュレーションによる計算値と良好に一致した。また、計算時間は約1/1000倍に短縮された。

〇CNNにより予測された流れ場を分散相モデル(DPM)に連成することで、サブミクロン粒子のフィルター内挙動も計算することができた。

概  要

 繊維状フィルターは、慣性衝突、さえぎり、ブラウン拡散、および重力などの様々な機構によって粒子を捕集する集じん装置である。エアロゾル粒子に対する捕集率の古典的理論が提案されているが、多種多様な異なる繊維形状と配置からなる現実的なフィルターの性能解析や構造最適化には、流体-粒子ダイナミクスの詳細を予測するための高解像度の数値シミュレーションが必要である。しかしながら、このような数値流体力学(CFD)シミュレーションの計算負荷は高く、計算時間が非常にかかる欠点があった。本研究は、このような欠点を克服するために、機械学習を応用するものである。

 本研究では、画像認識等で使用されている畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を代理モデルとして用いた。CNNの訓練データセットには、繊維配置や繊維形状を変化させて実施したCFDシミュレーションの計算結果を用いた。CNNにより予測された繊維群周りの速度場や圧力場は、同条件で実施したCFDシミュレーションと良好に一致することがわかった。また、その計算時間はCFDシミュレーションより約1/1000倍に短縮された。

 CNNにより得られた流れ場を分散相モデル(DPM)に連成することで、サブミクロン粒子のフィルター内挙動の計算を行った。従来のCFD-DPM法によって得られたフィルターの捕集率を比較すると、0.3 μmより小さな粒子では若干過大評価する傾向が見られたものの、概ね良好な一致が得られたことから、本研究で開発した手法は繊維状フィルターの設計や最適化の目的に適していることが示された。

論文情報
Shirzadi, M., T. Fukasawa, K. Fukui, T. Ishigami : "Application of Deep Learning Neural Networks for the Analysis of Fluid-Particle Dynamics in Fibrous Filters" Chemical Engineering Journal, 455, 140775 (2023). https://doi.org/10.1016/j.cej.2022.140775

Shirzadi, M., T. Fukasawa, K. Fukui, T. Ishigami : "Prediction of Submicron Particle Dynamics in Fibrous Filter Using Deep Convolutional Neural Networks" Physics of Fluids, 34, 123303 (2022). https://doi.org/10.1063/5.0127325

【お問合せ先】

石神 徹
大学院先進理工系科学研究科 化学工学プログラム 微粒子工学研究室
E-mail: ishigami_at_hiroshima-u.ac.jp (注: _at_は半角@に置き換えてください)


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