本研究成果のポイント
〇切り替え操作によって、見込み(MTS)生産と受注(MT0)生産のどちらにも対応可能な機械を複数台備えたハイブリッドMTS/MTO生産システムの最適運用方策を明らかにした。
〇機械切り替え時には時間のロスと費用を伴うとしたもとで、対象とする問題を離散時間マルコフ決定過程としてモデル化し平均コスト最小化を目的とした。
〇MTS/MTO製品の需要到着に応じた機械の切り替えが望ましいが、一度に切り替える機械台数は1台以下に制限しても問題なく、一部の機械をMTS用もしくはMTO用に専用化して問題を扱いやすくすることが可能であることを実験的に示した。
概 要
見込み(MTS: Make-to-stock)生産と受注(MTO: Make-to-order)生産のどちらにも対応可能な複数台のハイブリッド機械で構成された生産システムの効率的な運用方法を研究した。MTS生産ではあらかじめ製品を生産して在庫しておき、在庫から需要に対応する。一方のMTO生産では、顧客の注文が到着した後に生産に着手して製品を顧客に届ける。いずれの機械も事前にMTS製品かMTO製品用に設定したもとで対応する製品を生産する。もう一方側の製品を生産する必要が生じた場合は、段取り替え作業が必要となり時間のロスと費用が発生する。本研究では対象問題を離散時間マルコフ決定過程としてモデル化し、需要がランダムに到着するもとで期あたりの平均コストを最小化する最適運用方策を求めた。平均コストはMTS製品在庫、MTO製品の注文待ちと失注、段取り替えで構成されるとした。
数値実験より、(1)状況に応じて機械の状態をMTS用もしくはMTO用に切り替えることが有効である、(2)一度に複数台の機械を切り替えることが可能であっても1台を切り替えるか否かを検討すれば十分である、(3)ハイブリッド機械群の一部を、MTSもしくはMTO専用として運用することは検討の価値がある、を明らかにした。
多くの製造企業がMTS生産とMTO生産の両方に対応するなかで、限られた資源を効率的に運用することが求められている。本研究成果はこれらの企業における最適運用方策を検討する際の示唆を与える。
【論文情報】
Yutaro Sato, Hiroyuki Maeda, Ryusei Toshima, Keisuke Nagasawa, Katsumi Morikawa, Katsuhiko Takahashi, “Switching decisions in a hybrid MTS/MTO production system comprising multiple machines considering setup,” International Journal of Production Economics, Vol. 263, 2023, 108877. DOI:10.1016/j.ijpe.2023.108877