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本研究の要旨:本研究では,これまで,熱的な合成化学反応で汎用されてきたDanishefsky-Kitaharaジエンを,光エネルギーを用いる化学合成反応に適用した。このことにより,これまで,熱反応では不可能であった新たな位置での炭素−炭素結合反応が可能になった。この発見により,特異な生物活性を持つオキセタン類の短工程合成が期待される。
詳細:Danishefsky-Kitahara ジエンtrans-1は,DanishefskyとKitaharaによって,1974年に開発された高い求核性を持つジエンである (JACS, 1974, 96, 7808).ルイス酸存在下でのケトンとの熱的な化学反応によりC4位で選択的に炭素−炭素結合した生成物2が得ら,数多くの天然物合成に利用されてきた。本研究では,ケトン類の電子励起状態が,基底状態のケトンの反応性とUmpolungな関係にあることに着目し,無触媒での光反応を試みた。その結果,熱反応とは異なる位置で高収率にオキセタン類3,4が生成することを見出した。オキセタン類は,抗がん活性など特異な生物活性を有していることが知られているため,本光反応を用いた生物活性物質の短工程合成反応への展開が期待される。
この論文は,Organic & Biomolecular Chemistry誌のEditor’s Collectionに選出された。
【論文情報】
掲載雑誌:Organic & Biomolecular Chemistry, 2020,18, 4962-4970
タイトル: Photochemical [2 + 2] cycloaddition reaction of carbonyl compounds with Danishefsky diene
著者:Dian Agung Pangaribowo and Manabu Abe
https://doi.org/10.1039/D0OB00921K
広島大学大学院先進理工系科学研究科
教授 安倍 学