シルセスキオキサンハイブリッドフィルムの分子内空隙による断熱特性

本研究成果のポイント

〇ジメチルヒドロシリル末端を有するオリゴメチルシルセスキオキサンとかご型構造を有するオクタビニルシルセスキオキサン(ビニル-POSS)のヒドロシリル化からPOSSユニットを含むエチレン架橋PSQフィルムを得た。

〇5 wt%のビニル-POSSユニットを含むエチレン架橋PSQフィルムは、低い熱拡散率と密度を示した。また、無色透明で、高い熱安定性を示した。

〇得られたPSQフィルムの陽電子消滅寿命の測定は、以前に報告されたPOSSユニットを含まないPSQフィルムと比較して、PSQフィルムのポア体積が増加し、断熱特性が向上していることを示した。

概  要

断熱材料としての応用に関して、有機/無機ハイブリッドポリマーが盛んに研究されている。エチレン架橋したケイ素原子を含むポリシルセスキオキサン(PSQ)フィルムは、分子内ボイドスペースによって断熱性が向上しているため、特に興味深いものとなっている。

この研究では、ジメチルヒドロシリル末端を有するオリゴメチルシルセスキオキサンとかご型構造を有するオクタビニルシルセスキオキサン(ビニル-POSS)のヒドロシリル化を検討した。得られた5 wt%のビニル-POSSユニットを含むエチレン架橋PSQフィルムは、低い熱拡散率と密度を示した(1.19 g/cm3および1.21 × 107 m2/s) 。また、無色透明で、5%および10%重量損失温度が382と453℃という高い熱安定性を示した。

陽電子消滅寿命の測定は、以前に報告されたPOSSユニットを含まないPSQフィルムと比較して、今回合成されているPSQフィルムのポア体積が増加していることを示した。これらの結果は、PSQフィルムの断熱特性がPOSSユニットの周辺の分子内ボイドスペースの形成によって改善されたことを明確に示しており、PSQベースの高性能断熱材料の分子設計に重要なヒントを提供している。


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