本研究成果のポイント
〇老朽化した下水道管路から都市水域への漏水を発見するためのフィールド調査手法を開発、漏出点の発見により有効性を実証した。
〇都市部の中心街において、香料をトレーサーとして使用し、漏出の可能性を発見した。
〇使用された物質は漏出のトレーサーとして適用可能であることがわかったが、バックグラウンドレベル、すなわち雨の影響も無視できないことを明らかにした。
概 要
現在社会基盤施設の老朽化は日本を含む先進国の喫緊の課題の一つである。都市部では下水道の汚水管の老朽化は管路の施設耐用年数からいってこれから10年内に大きな問題となりうる。破壊に至らない軽微な亀裂であっても漏水によって表流水、地下水汚染を引き起こしうるためである。
本研究では都市部における家庭用下水道の漏水による表流水の汚染をの可能性を検討するため、40年以上前に整備された古い分離型下水道がある都市流域において、無降雨時の雨水管網の生活起源化学物質(香料物質)濃度分布を計測し汚染の発生を示すホットスポットを発見した。1つは家庭からの直接排水によるもの、もう1つは1つまたは複数の家庭から古い下水道パイプラインの遺構から雨水管への二重の誤接続によるものであろうことを見出した。なお一方、地表面到達前の雨水を参照として測定し、対象物質が、解析上無視し得ぬ水準で含有していることを見出した。
本研究では、老朽化した国内下水道網の整備不良による生活排水の漏出の存在を実証、また漏出のトレーサーとして香料化合物が有効であることを示した。
出典:N. Ozaki, M. Funaki, T. Kindaichi, A. Ohashi, Detection of domestic-use chemicals in urban storm drains during dry days, in as separated sewer area, Environmental Science: Water Research & Technology, 2023.