ユニタリ群上の高強度なデザインの構成アルゴリズム

本研究成果のポイント

〇ユニタリ群上のデザインの概念は、 量子計算機の重要な部品である量子ゲートの品質検定の手法と関連して注目されている。

〇しかしユニタリ群上の高強度なデザインを、 誤差を許さずに具体的に構成する方法は知られていなかった。

〇本研究ではユニタリ群上で高強度かつ誤差のないデザインを具体的に構成する帰納的アルゴリズムを開発した。

概  要

数学の「組合せ論」と呼ばれる分野において、 「デザイン」という概念が研究されている。デザインとはある種の空間において、 ``バランスのよい点配置’’ を意味するものである。 デザインにおける ``バランスのよさ’’は強度という言葉で数学的に定量化されており、一般に高強度なデザインは応用上有用であるとされる。しかし、 高強度なデザインについては、 その存在は知られている(ある種の背理法を用いて示される)が、一般には厳密(誤差を許さない)かつ具体的な構成法は知られていない。

デザインの概念は点配置を行う空間を取り換える毎に異なるものとなるが、特にユニタリ群と呼ばれる空間上のデザインの研究は、2009年のA. Roy, A. J. Scott の論文を皮切りに、 現在まで盛んに研究が行われている。特に近年、量子ゲート(量子計算機の重要な部品)の品質検定として、ユニタリ群上のデザインを用いたランダマイズドベンチマーキングと呼ばれる手法が注目されている。

しかしユニタリ群上のデザインについても、高強度なものを誤差なく具体的に構成する方法はこれまで知られていなかった。本研究では表現論と呼ばれる数学理論を用いて、ユニタリ群上の高強度かつ誤差のないデザインを具体的(代数的)に構成する帰納的アルゴリズムを開発した。

 

【論文情報】
Eiichi Bannai, Yoshifumi Nakata, Takayuki Okuda, Da Zhao, Explicit construction of exact unitary designs, Advances in Mathematics (405) 108457, (2022):
https://doi.org/10.1016/j.aim.2022.108457  

 


up