文化財学の探求

文化財学への誘い

文化財は、私たちの祖先が創造し、継承してきた歴史的文化遺産(もちろん自然遺産も文化財に含まれます)です。

豊かな文化遺産を持ち、それを守り、伝えることは、先進国の必要条件です。自国の文化遺産の価値すなわち素晴らしさを知っていることは、世界中を活躍の場とする現代文化人に必要不可欠なのです。日本の近代化の責務を負って明治期に欧米へ渡った新進気鋭の留学生が、欧米の知識人に日本の伝統文化について質問されて答えられず、恥ずかしい思いをしたというエピソードは、数え切れません。

広島大学の文学部には、日本をはじめ東洋までも含めた、文化財に関する総合的な学習ができる文化財学の分野があります。文化財は文化遺産と自然遺産の広範囲にわたりますが、そのなかでも質と量において文化財の中心を占める、仏教美術・工芸品・建造物および史跡・名勝などについて、幅広く、しかも専門的に深く学ぶことができます。

文化財学のカリキュラム

仏教美術・工芸品・建造物・史跡・名勝という文化財の中心的テーマについて、日本中の大学のなかで唯一同時に学ぶことができます(一般的には史跡は文学部の考古学、美術や工芸品は美術史学、建造物は工学部の建築学科、名勝は農学部に分かれてしまいます)。

仏教美術を中心として日本美術や東洋美術の歴史や見方を学ぶ日本・東洋美術史学、日本・東洋工芸史学、日本や東洋の古建築の歴史や見方を学ぶ社寺建築学や住宅史、城郭や寺院などの遺跡の調査法や保存活用を学ぶ文化財保存学や城郭史の講義を開いており、同時に少人数でそれらに関する演習や実習を行っています。

演習や実習には、野外調査や実物を用いた講習も含まれており、さまざまな文化財に関する総合的な知識や技能を得ることができます。毎年一度、京都や奈良の文化財を実地見学する実習もあります。

文化財学の卒業論文と卒業後の進路

文化財学の分野は、平成9年度に新しく設けられ、平成13年度に初めての卒業生を送り出した新しい分野です。卒業論文のテーマは、文化財学分野ならではの広範な学習成果を反映して、とても多様です。史跡・名勝からの各地の城跡や石造アーチ橋、仏教美術からの仏画や仏像、工芸品からの密教法具や小袖、懸仏、建造物からの城郭建築・社寺建築・近代建築、民俗からの神事や神楽といった研究に取り組みました。古くは縄文時代から新しくは昭和戦後までのありとあらゆるテーマに及んでいます。

テーマの選択は学生の自主性を重んじ、教員が丁寧に指導しております。卒業論文作成のための資料収集や現地調査、そして膨大な資料の分析と考察を通じて、文化財学に対する学識を高めるものですが、社会人になってからは、そうした能力を多方面に応用して活躍して欲しいと思います。また、文化財学のさらなる探求のために大学院に進学する人もたくさんいます。

卒業後の進路は、教育委員会等の文化財担当者、新聞社や放送局の文化事業関係をはじめ、様々な公共団体や企業があります。

見学実習

▲国宝教王護国寺金堂の見学実習(京都市)

勉強風景

▲研究室での勉強風景


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