寄贈本の紹介(2021年度)

神の名の語源学

著者:川村 悠人

発 行 所:渓水社

著者からのメッセージ
  古代インドのサンスクリット語学者が残した語源考と神々への思索の跡。原典資料の丹念な読み解きから、未知の思想体系を発掘していく。アグニ(火天)やインドラ(帝釈天)といった日本でお馴染みの神々も議論の俎上にのせられる。語源とはなにか。神々の名にはどのような意味が込められているのか。古の人々は神々の名にどのような神の姿を見てとったのか。言語と神話が交差する異国の世界。そんなまだ見ぬ世界へと読者をいざなう意欲作である。

東北史論ー過去は未来に還元するー

著者:河西 英通

発 行 所:有志舎

著者からのメッセージ

 2011年の東日本大震災から10年が経過した。それ以前から近現代の東北地方をフィールドに歴史研究を進めて来た。『東北』『続・東北』などがその成果である。しかし、大震災で大きく傷ついた東北社会を前にして、先に進むことにためらいを覚えた。そうした苦悩の中でも試行錯誤しながらいくつかの論文を執筆した。本書はそれらを再検討・再構成・再省察し、戊辰戦争・明治維新から戦後・現代にかけて全10章にわたって東北史の流れを描き直した作品である。深層でつながっている東北と広島の関係性についても言及した。

存在肯定の倫理Ⅱ 生ける現実への還帰

著者:後藤雄太
発行所:ナカニシヤ出版

著者からのメッセージ
 
本書は、2017年に刊行した『存在肯定の倫理Ⅰ ニヒリズムからの問い』(ナカニシヤ出版)の続編に当たる。前巻が思想的・基礎的考察を中心にしているのに対して、本書は、現実社会で起こっている諸問題を取り扱った、いわゆる「応用倫理学」に分類される論考を収めたものである。具体的には、終末期医療や人工妊娠中絶などの生命倫理的課題、いじめやスクールカーストなどの教育倫理的課題、インターネットやスマートフォンにまつわる情報倫理的課題などを取り上げ、それらの諸問題の根底に横たわる、現代人における<存在肯定>の問題を探究している。

『阿毘達磨集論』の伝承 インドからチベットへ、そして過去から未来へ

編著者:高橋晃一・根本裕史
著者:高橋晃一、根本裕史、Achim Bayer、彭毛才旦、李学竹、崔境眞
出版社:文学通信
発行所:ナカニシヤ出版

著者からのメッセージ
   本書が取り上げるのは5世紀ごろにインドの学僧アサンガによって書かれた仏教の哲学文献、『阿毘達磨集論』である。もともとサンスクリット語によって書かれたこの文献のほとんどは長いあいだ散逸し、断片が残っているに過ぎない状況であったが、近年の写本発見などにより、資料の全貌が明らかになりつつある。新たに発見された資料、そしてそれにもとづいて復元された原典はなにを物語るのか。インドからチベットへ、そして過去から現在に至るまでそれはいかに伝承されてきたのか。最新の研究成果にもとづき、『阿毘達磨集論』の原典・翻訳・註釈について多角的に論じる。

 

「らしさ」を育てるシュタイナー教育とモンテッソーリ教育 -発達支援へのチャレンジ

著者:衛藤吉則
発行所:ナカニシヤ出版

著者からのメッセージ
 この本は、郷里の北九州市に2018年11月19日に創設したNPO法人シュタイナー&モンテッソーリ・アカデミー(児童発達支援・放課後等デイサービス)において、「生きづらさをもつ子どもたち」とともに歩んだ3年間にわたる教育実践とその背景にある理論をまとめたものである。

キリシタン語学入門

著者:岸本恵実・白井純
発行所:八木書店

著者からのメッセージ
 本書は、キリシタン文献を語学的に研究するために必要となる知識を整理し、最新の学術的成果を盛り込んで分かりやすく紹介した入門書である。
 キリシタン文献とは大航海時代に日本で宣教活動を行ったイエズス会を中心とする修道会が残した文献で、宣教の目標である翻訳宗教書と、それを可能としたヨーロッパのラテン語学の伝統による日本語学習の成果が辞書や文法書によって構成されている。
 本書前半にはキリシタン語学概説を置き、後半には各文献の特徴と研究上の切り口を提示した。そして、各項目間の参照注を配置することで相互に行き来しながら知識の定着が図れるよう工夫した。講義・演習の教科書として、最新の研究動向を知る専門書として、さらには、キリシタン語学に関心をもつすべての読者の手引き書として、ご活用いただきたい。

歴史的世界へのアプローチ

編者:春田直紀・新井由起夫・David Roffe
著者:井内太郎 ほか
発行所:刀水書房

著者からのメッセージ
 本書は、中・近世ヨーロッパならびに日本の様々な時空間を対象とした歴史研究の成果について、「権威と権力」、「社会とアソシエーション」、「交通と貨幣」、「記憶と史料」の4つのセクションに23編の論文を配置して検討し、歴史的世界へのアプローチの方法を進化させている。本書の特徴は、4つのテーマに関する欧米・日本の代表的研究者が結集し、その世界的水準を提示すると共に、英語と日本語で執筆することにより、それらの成果が国際的に深められているところにある。

『台湾愛国婦人』研究論集-〈帝国〉日本・女性・メディア-

編者:下岡友加・柳瀬善治
発行所:広島大学出版会

著者からのメッセージ
 愛国婦人会台湾支部機関誌『台湾愛国婦人』(1908-1916)は、〈帝国〉日本が〈外地〉で刊行した初の女性誌である。本誌は台湾総督府の施行する台湾山地「討伐」事業後援の役割を担ったプロパガンダ誌であるとともに、当代の著名作家、知識人の原稿を大量に掲載している点に特徴を持つ。稀覯本であったため、十分な検討が行われてこなかったが、近年の新たな所蔵発見により、「『台湾愛国婦人』復刻版 明治編・大正編」(三人社、2019~)が刊行された。
 本書は復刻版解説を担当した研究者を中心に、本学大学院での授業成果(院生の演習発表)を加え、小説、評論、短歌、映画、画報、童話、講談、漢詩、埋め草など、多角的な視座から雑誌の性格を照射すべく編まれた論集である。
 


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