寄贈本の紹介(2024年度)

South Asia's Transition from Agrarian to Industrialized Economy: The Employment and Labor Market

South Asia's Transition from Agrarian to Industrialized Economy: The Employment and Labor Market_表紙

編者:Kazuo Tomozawa、Koichi Fujita
発行所:Routledge

寄贈者からのメッセージ

南アジア諸国は農業中心の経済から工業化経済へ移行する過程にあり、農業と非農業部門の成長率の格差拡大や、農民と都市住民の間の所得格差の増大が発現している。本書は16章からなり、南アジアにおける経済発展の移行過程におけるさまざまな問題を分析している。特に、インドの農業調整問題や産業部門の課題に焦点を当てる。まず、農民や農産物の取引業者、加工業者が直面する課題、特に都市部や国外で主に台頭している市場の高度な需要にどのように適応したかを論じる。その後、非農業部門の発展に焦点を当て、グローバル・バリュー・チェーンの視点により主要産業の動向を分析する。最後に、農業や非農業部門と密接にかかわる労働移動や労働市場の動向を詳らかにする。本書は、南アジアの経済地理学的研究において、貴重な一冊となるであろう。

文学をひらく鍵-ジェンダーから読む日本近現代文学

文学をひらく鍵_表紙

編者:二宮智之・九内悠水子・中元さおり・大西永昭・有元伸子
発行所:鼎書房

寄贈者からのメッセージ

本書は、日本近現代文学を〈ジェンダー〉の視座から考察した論文集である。〔文学×ジェンダー〕を縦糸に、〔社会・宗教・身体・芸術〕の4つの視点を横糸に、夏目漱石から現代のゲーム文学までを読み解いた16本の論文と、1本のエッセイとで構成されている。
本書のもう一つの側面は、執筆者が2004~2024年度の期間中に広島大学文学研究科/人間社会科学研究科の博士課程後期に在籍し、日本近現代文学の有元ゼミにおいて共に学んだことにある。過去と現在、そして未来を結びつける新たな視点を提供すべく、各論者たちがジェンダーという「鍵」によって文学をひらいていった考察の軌跡を、ぜひご高覧いただきたい。

志士たちの詩想

志士たちの詩想_表紙

著者:有馬卓也
発行所:広島大学出版会

寄贈者からのメッセージ

桜田門外の変や坂下門外の変を決行した水戸志士たち、或は西郷隆盛・高杉晋作・武市瑞山といった薩長土の志士たち、そして東北米沢出身で薩長を蛇蝎の如く思っていた雲井龍雄。彼らは自らの想いをどのような語句を以て漢詩中に詠み込んでいたのであろうか。本書は維新志士が残した漢詩を手がかりに、行動の原動力としての「狂」、「狂」の正当性を担保する両輪の「忠(公)」と「孝(私)」。そして行動しないことを示す「偸生」といった語に注目しつつ、彼らの詩想を明らかにする。

続 守・破・離

続 守・破・離_表紙

著者:岸田裕之
発行所:レタープレス株式会社

もっと読みたくなる!芥川龍之介

もっと読みたくなる!芥川龍之介_表紙

著者:野田康文・入江香都子・溝渕園子
発行所:作品社

寄贈者からのメッセージ

本書は、芥川龍之介の文学作品の奥深い魅力を、異なる専門領域の執筆者が多角的に炙り出そうとした研究書である。芥川の作品が国内外で今なお多くの人々に愛され、研究され続けている理由を探りつつ、「藪の中」や「秋」といった有名な作品だけでなく、あまり知られていない作品にも焦点を当てている。三部構成で、第一部は芥川の創作方法を考察する作品論、第二部は登場人物の自己像や自意識、アイデンティティの問題を扱う作品論、第三部は〈越境〉をテーマに比較文学の手法を用いた芥川文学論となっている。エッセイ風のコラムも収録。芥川文学をより深く理解したい一般読者から研究者まで、幅広い層に向けて書かれた一冊である。

ニヒリズムと無神論論争:フィヒテと三宅剛一

ニヒリズムと無神論論争_表紙

著者:玉田 龍太朗
発行所:晃洋書房

寄贈者からのメッセージ

「既に隈元忠敬先生が御退官なさった後に広島大学に入学した私がフィヒテ哲学の研究に本格的に取り組み始めたのは実は京都大学大学院に進学後のことであり、広島大学卒業時に文学部に提出した拙論はハイデッガー哲学の研究に関するものであった。この卒業論文審査に当たってくださった西洋哲学研究室・古代哲学の西川亮先生、中世哲学の水田英實先生、そして近現代哲学の高柳央雄先生から公聴会の折に賜った御助言を思い出しつつ、三宅剛一の根源的洞察に沿って自分の若き日の考察を振り返ることは、自分に哲学研究を志した頃の熱き内なる衝動を再び呼び覚ます素晴らしい契機となった。」(緒言より)
ありがとうございます。

白くぬれた庭に充てる手紙

白くぬれた庭に充てる手紙_表紙

著者:望月 遊馬
発行所:七月堂

アメリカ映画史入門

アメリカ映画史入門_表紙

副編集:大地 真介
発行所:株式会社三修社

寄贈者からのメッセージ

本邦初のアメリカ映画史の本格的概説書。第I部では、各章冒頭でアメリカ映画についての各時代の動向や出来事について論じたうえで、その時代の代表的な映画監督と作品を映画史的意義とともに解説。第II部では、階級、人種・エスニシティ、ジェンダー、セクシュアリティ、宗教、家族、ジャンル、アダプテーションなど映画研究の主要テーマからアメリカ映画を考察。歴代アメリカ映画興行収入ランキング、映画製作倫理規定、アメリカ映画研究主要文献、映画用語集といった資料も巻末に付録。

ポスト形而上学的思考としてのヘーゲル哲学

ポスト形而上学的思考としてのヘーゲル哲学_表紙

著者:硲 智樹
発行所:株式会社晃洋書房

寄贈者からのメッセージ

本書の目的はヘーゲル哲学が形而上学ではなく、むしろそれを批判する「ポスト形而上学」の思考であることを論じることにある。まずはヘーゲルが現在で言うところの意味論の視点から伝統的形而上学を批判していることが指摘される。そこから、ヘーゲルの論理学は存在論でも超越論哲学でもなく、プラグマティックな全体論的意味論として理解されうること、そしてヘーゲル哲学は(弱い)概念的実在論であることが明らかにされる。さらに、ヘーゲルの「精神」が言語的実践の共同体として規範性の領域であることから、教養形成(規範の習得)の過程、道徳性から人倫への移行、ヘーゲルの行為論が、規範性の視点から解釈される。

ドイツ文学旅日記

ドイツ文学旅日記 表紙

著者:小林 英起子
発行所:未知谷

寄贈者からのメッセージ

本書はドイツ文学の作家の生誕の地や、調査で訪れた北ドイツハンザ都市、ニーダーザクセン州の街、ライプツィヒ、ベルリンなど現地の様子や、詩人と文学について一般向けに綴ったものである。第1章では、ケルンの探訪記が日独比較文化の視点から語られ、ドイツ留学を志す人への道案内となろう。第2~7章では、T.マン、レッシング、ゲラート、ノイバー夫人、リヒテンベルク、ビュヒナー、ゲーテ、ケストナー、ハイネ、ブレヒト等への思いが綴られ、ドイツ文学へと誘う。補章では、大学の研究室から広島の街へと視点を移し、ドイツ語やドイツ文学を介した観察や出来事が書かれている。口絵の他、写真多数。

戦後日本の傷跡

戦後日本の傷跡 表紙

編者:坪井 秀人
発行所:株式会社臨川書店

顧炎武と平賀中南の春秋學

顧炎武と平賀中南の春秋學 表紙

訓注者:野間 文史 
発行所:明德出版社

PTSDの日本兵の家族の思いと願い

PTSDの日本兵の家族の思いと願い 表紙

編者:PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会 
発行所:あけび書房株式会社

寄贈者からのメッセージ

この本は黒井秋夫さんを中心に、復員日本兵と暮らした家族の証言と研究(当事者研究)、家族による社会文学が載せられています。黒井さんは1948年生まれで、復員兵の父親のPTSD状態を日本政府と社会に対し告発しています。私(中村平)は「当事者として/研究する者としてトラウマを抱えた祖父と私の関係を語る」を投稿しています。「戦争ボケ」と揶揄され、あるいは戦友会で憂さを晴らすイメージの復員日本兵に対し、戦後日本社会は日本軍国主義の罪責を押しつけ、自らは真相解明を怠り思考停止してきたのではないでしょうか。復員兵の暴力や無気力、奇矯なふるまいが家族の恥として語られてこなかった戦後史は、日本社会と政府の無責任と連累の所在を逆照射しています。

孝経・曾子

孝経・曾子 表紙

訳注者:末永 高康
発行所:岩波書店

寄贈者からのメッセージ

「孝は、德の本なり、教えの由りて生ずる所なり」――孔子とその髙弟曾参(曾子)が「孝」の意義を論じた『孝経』。「孝」とは何か、「孝」によってあるべき世をいかに実現できるかを語る本書は、儒家の経典の一つとして、『論語』とともに読み継がれ、東アジアの伝統的な道徳観の基底をなした。曾子学派が師の言行を伝える『曾子』を併収する。

性善論的誕生

性善論的誕生 表紙

著者:末永 高康 
発行所:國立臺灣大學


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