ポスト形而上学的思考としてのヘーゲル哲学
著者:硲 智樹
発行所:株式会社晃洋書房
寄贈者からのメッセージ
本書の目的はヘーゲル哲学が形而上学ではなく、むしろそれを批判する「ポスト形而上学」の思考であることを論じることにある。まずはヘーゲルが現在で言うところの意味論の視点から伝統的形而上学を批判していることが指摘される。そこから、ヘーゲルの論理学は存在論でも超越論哲学でもなく、プラグマティックな全体論的意味論として理解されうること、そしてヘーゲル哲学は(弱い)概念的実在論であることが明らかにされる。さらに、ヘーゲルの「精神」が言語的実践の共同体として規範性の領域であることから、教養形成(規範の習得)の過程、道徳性から人倫への移行、ヘーゲルの行為論が、規範性の視点から解釈される。
ドイツ文学旅日記
著者:小林 英起子
発行所:未知谷
寄贈者からのメッセージ
本書はドイツ文学の作家の生誕の地や、調査で訪れた北ドイツハンザ都市、ニーダーザクセン州の街、ライプツィヒ、ベルリンなど現地の様子や、詩人と文学について一般向けに綴ったものである。第1章では、ケルンの探訪記が日独比較文化の視点から語られ、ドイツ留学を志す人への道案内となろう。第2~7章では、T.マン、レッシング、ゲラート、ノイバー夫人、リヒテンベルク、ビュヒナー、ゲーテ、ケストナー、ハイネ、ブレヒト等への思いが綴られ、ドイツ文学へと誘う。補章では、大学の研究室から広島の街へと視点を移し、ドイツ語やドイツ文学を介した観察や出来事が書かれている。口絵の他、写真多数。
戦後日本の傷跡
編者:坪井 秀人
発行所:株式会社臨川書店
顧炎武と平賀中南の春秋學
訓注者:野間 文史
発行所:明德出版社
PTSDの日本兵の家族の思いと願い
編者:PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会
発行所:あけび書房株式会社
寄贈者からのメッセージ
この本は黒井秋夫さんを中心に、復員日本兵と暮らした家族の証言と研究(当事者研究)、家族による社会文学が載せられています。黒井さんは1948年生まれで、復員兵の父親のPTSD状態を日本政府と社会に対し告発しています。私(中村平)は「当事者として/研究する者としてトラウマを抱えた祖父と私の関係を語る」を投稿しています。「戦争ボケ」と揶揄され、あるいは戦友会で憂さを晴らすイメージの復員日本兵に対し、戦後日本社会は日本軍国主義の罪責を押しつけ、自らは真相解明を怠り思考停止してきたのではないでしょうか。復員兵の暴力や無気力、奇矯なふるまいが家族の恥として語られてこなかった戦後史は、日本社会と政府の無責任と連累の所在を逆照射しています。
孝経・曾子
訳注者:末永 高康
発行所:岩波書店
寄贈者からのメッセージ
「孝は、德の本なり、教えの由りて生ずる所なり」――孔子とその髙弟曾参(曾子)が「孝」の意義を論じた『孝経』。「孝」とは何か、「孝」によってあるべき世をいかに実現できるかを語る本書は、儒家の経典の一つとして、『論語』とともに読み継がれ、東アジアの伝統的な道徳観の基底をなした。曾子学派が師の言行を伝える『曾子』を併収する。
性善論的誕生
著者:末永 高康
発行所:國立臺灣大學