研究科長挨拶

大学院工学研究科長 菅田 淳

大学院工学研究科長
菅田 淳

 工学とは数学と自然科学を基礎として、公共の安全、健康、福祉のために有用な事物や快適な環境を構築することを目的とする学問だとされています。真理を追究する理学に対して、工学は社会の要請に対応して新しい価値を創造することが要求されます。工学は結果が求められます。直面する諸課題に対して、その課題を理解するだけでは十分ではなく、その解決法やより優れた性能を発揮する技術革新を提供しなければならないのです。

 国際的な環境が激変する時代に対応して、2015年の国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs)が提言されています。このSDGsの達成を工学の立場から貢献することを目的として経団連は今後目指すべき具体的社会像を「Society 5.0 for SDGs」の社会と位置づけています。Society 5.0とは、AIやIoT、ロボット、ビッグデータなどの革新技術をあらゆる産業や社会に取り入れ、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の未来社会の姿として提唱されているものです。Society 5.0の実現において、工学や技術者が果たすべき指導的な役割はますます大きくなるものと思われます。そのため、技術者は個々の専門分野の基盤力を強化するとともに、広い視野と判断力を身に付け、自らイノベーションを生み出す能力を養っておかなければなりません。

 平成22年4月から、大学院工学研究科は9専攻体制(機械システム工学、機械物理工学、システムサイバネティクス、情報工学、化学工学、応用化学、社会基盤環境工学、輸送・環境システム、建築学)で、研究・教育を担っています。広島大学は、平成25年に文部科学省の「研究大学促進事業」に、平成26年には文部科学省の「スーパーグローバル大学創生事業」(トップ型13校)に採択されました。広島大学は世界ランキングトップ100と肩を並べる研究大学を目指して研究力の強化とグローバル化に取り組んでいます。大学院では教育と研究を英語で行っていますし、国際会議での発表や留学、海外共同研究を経済的に支援する制度を整備しています。このような環境で数多くの優秀な修士号や博士号の取得者を輩出してきました。近年の社会の変革に対応していくため、産業界や学術界が求めている持続的発展可能な社会の実現に貢献する優れた技術者や工学系の研究者を育成できる新たな工学部の体制を平成30年(2018年)4月から構築しました。また、より幅広い視野を持った技術者・研究者の養成を目指して工学研究科を含む理系研究科を統合した新しい理工系研究科の設置に向けて準備しています。

 工学部・工学研究科で学ばれる皆さんが、それぞれの類、研究科で習得できる専門分野の知識や技能を極めるだけでなく、今後の科学技術イノベーションに対応できる幅広い知識をも蓄えた上で、思考力、判断力、コミュニケーション力を高めていただきたいと思っています。この研究や教育環境に恵まれた東広島の地で工学を学び、社会が必要とするグローバル技術者や研究者になることを目指してください。

 

広島大学 大学院工学研究科長
菅田 淳


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