2023年2月20日、第149回コンソーシアム人材セミナー ~チーム(協働・共創)で、未知・不可能にチャレンジ~ 「宇宙探査~生命の起源を探る~《小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトチーム》」を開催しました。
【講 師】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 津田 雄一 氏
【参加者】57人
概要
講師の津田氏の研究分野は航空宇宙工学、太陽系探査。主に、太陽系探査機のシステム設計、宇宙機を地上あるいは宇宙のある地点から目的地まで効率的に飛ばすための流動航行制御 を研究されています。
今回のセミナーでは、人類未踏の小惑星「リュウグウ」で惑星のかけら(サンプル)を採取し地球に届けるミッション「はやぶさ2プロジェクト」のチーム創り、チームワークについてお話しいただきました。
最初に、探査機総飛行時間2195日、総飛行距離52億4千万㎞に及ぶミッションの概要について、映像を交え、解りやすく丁寧に説明されました。
打上げ2014年12月3日、リュウグウ到着2018年6月27日、第1回タッチダウン2019年2月22日、第2回タッチダウン7月11日、リュウグウ出発11月13日、地球帰還2020年12月6日。
「はやぶさ2」は、地球大気圏近くでサンプルが入っている「カプセル」を切り離し、現在は拡張ミッションに就いています。新たな未踏の2つの小惑星を目指し飛行中、2031年に2つ目の小惑星に到着し、拡張ミッションを終えると話されました。
地球に届けられた「カプセル」には目標0.1gを大きく上回る5.4gのサンプルが入っており、現在、国内外の機関で分析されています。なお、60%は未来の科学者のために残しているそうです。
続いて、ミッションを成功裡に終えたプロジェクトチームについて話されました。
チームメンバー約600名。チームリーダーの配下約10名、技術スタッフ(JAXA内)約100名、協力企業メンバー約300名、他研究機関メンバー国内約130名・国外約50名。
この大規模な組織を少数のコアメンバーで管理されましたが、コアメンバー以外は「部下」ではなく「パートナー」あるいは「同志」のフラットな関係とし、一つの目標を共有し、一人一人が役割を担う関係を創った。これは難しいが醍醐味でもあったと話されました。
次にチーム創りについて話されました。宇宙探査はリーダーにも答えがわからない。だから、答えを解けるチームではなく、「問題」を作れるチームを創った。チームには600名の頭脳がある。リーダーができることは、600名の良いアイデアに気付き、チームの方向付けをすること。メンバーが考えやすい環境を創ることだと話されました。
メンバーの皆が「問題」を作るチームを創るためには、①自分自身の能力を熟知すること ②上司ではなく摂理・論理に忠実なチーム文化を創る ③個々人のモチベーションを育て高める が必要だと言われました。
そして、「問題」をブラッシュアップするためには、失敗経験が重要。失敗経験を如何に積むかを真剣に議論し、「管制訓練」で多種多様の失敗を仕掛け、チームで解決する経験や重い決断を下す訓練を積み重ねたと話されました。この訓練によって、チームが信頼関係の上で一つとなり、リュウグウの着地点探し、2回目のタッチダウン決行の判断等々の緊急事態が生じた際にも、反対意見も引き出したうえで、望む結論に結び付けることができた。チームワークで、「安心」を担保に「挑戦」し、大成功を得たと振り返られました。
学生へのメッセージとして、成功するチームマネジメントは「科学に徹し、仲間を信頼し、童心を忘れず」と話されました。
最後に、あるメンバーのことばが紹介されました。
「はやぶさ2はみんなが『自分がいなければ成功していなかった』と思えるプロジェクトだよなあ」
(グローバルキャリアデザインセンター 宮地)
【お問い合わせ先】
広島大学グローバルキャリアデザインセンター(担当 宮地)
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*(AT)は半角の@に変換してください。
TEL:082-424-4564