【2024/1/19開催報告】第161回コンソーシアム人材セミナー「科学技術と共に実現するインクルーシブな未来社会に向けて」を開催しました

2024年1月19日、第161回コンソーシアム人材セミナー「科学技術と共に実現するインクルーシブな未来社会に向けて」を開催しました。

【講 師】日本科学未来館 館長(IBMフェロー、カーネギー・メロン大学客員教授)
     浅川 智恵子 氏
【参加者】67人

概要

 浅川氏は、小学生の時のプールでの事故がもとで視覚障害を抱えておられます。
 冒頭に、ご自身が視覚障害者となり、視覚障害者の情報アクセシビリティに関する難しさを実感されたことが、現在の研究関心のもとになっているとお話されました。

 次に、視覚障害者のアクセシビリティを向上させるための取り組みを紹介されました。
 例えば、読書へのアクセシビリティを向上させる方法の一つとしてのKindleの読み上げ機能、家電製品へのアクセシビリティを向上させる方法の一つとしてのアプリケーションを活用した洗濯機の利用やコーヒーメーカーのボタン選択の工夫などです。身近なものも、アクセシビリティの観点で作られていなければ、視覚障害者には非常に使いづらいメディアになります。

 このような具体例をとおして、アクセシビリティの観点を踏まえてイノベーションを起こすことの重要性を説明されました。

 その後、これまでのご自身のキャリアについて簡単に説明されました。
 1985年に日本アイ・ビー・エムに入社されたのち、主に視覚障害者へのアクセシビリティ向上につながる研究をされてきました。

 キャリアのなかで特に印象に残っている一つとして、カーネギーメロン大学での客員教授の経験を挙げられました。滞在期間中に、論文発表など、研究チーム内で非常に多くの研究成果をあげ、刺激を受けた経験について話されました。

 研究活動をもとに浅川氏を中心に開発された「AIスーツケース」は、ご自身が白杖の代わりにスーツケースを使用された実体験から着想されたものです。カーネギーメロン大学や日本科学未来館、日本国内の大学など、様々な機関が協働し、実証研究を行っています。「行列に並びづらい」「買い物などを目的に、気軽に自由に歩き回るハードルが大きい」など、これまで視覚障害者が抱えていた困難さの克服を目的に、現在は社会実装に向けた検討が行われています。

 この他、電話やテレビの字幕機能など、アクセシビリティについて希求した結果、社会全体にインパクトを与えるイノベーションが生じた例も紹介されました。

 最後に、浅川氏が館長を務めておられる日本未来科学館での取り組みについて、お話されました。
 日本未来科学館を人々を繋ぐプラットフォームにする構想「Miraikan Vision 2030」に基づき、常設展示のリニューアルなどにも着手されています。また、すべての展示に来場者が意見を投稿するボードを設けるなど、来館者のニーズを取り込む工夫も凝らしていると話されました。

 浅川氏は「視覚障害者は目立つべきか?」「技術の社会実装にあたり、プライバシーや安全性の壁が生じていること」など、講演のなかで様々な問いを投げかけられました。また、締めくくりのメッセージ「イノベーションは考えているだけでは起きない」をとおして、イノベーションへ向き合うために重要なアイディアの一つを提示されました。

 多くの参加者から、多岐にわたる質疑ありました。イノベーションでどのように社会貢献できるのか。浅川氏のお話も踏まえて引き続き検討してまいります。

                       (文責:人間社会科学研究科博士課程後期2年 武島 千明)
 

【お問い合わせ先】
広島大学グローバルキャリアデザインセンター(担当 宮地)
E-mail:wakateyousei(AT)office.hiroshima-u.ac.jp
*(AT)は半角の@に変換してください。
TEL:082-424-4564


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