2024年4月17日、Zoomと対面(総合科学部K210)の同時双方向形式にて、キャリアマネジメントセミナー「国際機関でのキャリア形成」を開催しました。
【講 師】世界銀行 大森 功一 氏、久保田 利惠子 氏
【参加者】39名(対面:15名、オンライン:24名)
概要
大森氏、久保田氏が勤務されている世界銀行は、経済学に限らず様々な専門性をもつ人々が働いています。そのなかでも、今回ご登壇された大森氏は東京事務所 上級対外関係担当官として、久保田氏は東アジア・太平洋地域総局 環境・天然資源・ブルーエコノミー 上級環境エンジニアとしてご活躍されています。
はじめに、大森氏より世界銀行の概要と、入職するための方法がまとめられました。途上国への支援を使命として活動を行う国際金融機関である世界銀行がどのようなシステムで運営されているのか、途上国の公共事業への助言・融資・技術協力を行うために、どのような人々がかかわっているのか、さらにどのような人材が世界銀行に求められているのか、という点について、具体例を挙げながら説明されました。
次に、久保田氏より、ご自身のキャリアや現在の業務が紹介されました。
JICA、ベンチャー企業、UNESCO世界遺産センター、国立環境研究所などにおける職を歴任され、実務や研究の経験を積まれていた氏は、世界銀行以外にも様々な国際機関へ応募をされていたほど、国際機関での勤務への関心が強かったそうです。氏が世界銀行へご入職されたのは、2020年です。あるとき、偶然ご自身にぴったりと合った業務内容の公募を世界銀行にて見つけ、「運と縁」によって入職した経緯についてお話されました。
また、ご自身の国際協力の仕事への姿勢を表すエピソードとして、JICAにて先輩から学んだ「白地図に色を塗っていく」ことを紹介されました。白地図を広げ、訪れたことがある(仕事をしたことのある)国に色を塗る作業は、氏がどれだけの国を具体的にイメージすることができるようになったのか、を表しています。氏は、この作業を少しずつ行っていくことが、世界平和につながると考え、業務にあたられているそうです。
その後、どのようにご自身の専門性を活用し、世界銀行での業務にあたっているのかについても具体的にお話されました。ご自身が担当されていた「廃棄物」に関するプロジェクトを例に挙げ、対象国の調査、アセスメントを行ったうえで、関係機関との調整を行い、世界銀行の理事会に提出するための報告書を作成するという業務のプロセスについて説明されました。
最後に、ご自身も博士課程に在籍中であることから、国際機関で働くうえでの博士課程出身者の強みについても話されました。博士課程での調査・研究の経験は、自身の知識を説明すること、他者と文書をとおしてコミュニケーションをとることが重視される世界銀行での業務に活用されているということなどをお話されました。
質疑応答では、「英語で早く読み書きするためにどのような工夫をしているのか?」「業務を遂行するうえで『誰も取り残さない』という理念を達成するためにどのような手立てを講じているのか?」「世界銀行での業務に歴史学がどのように役立ち得るのか?」「対象国との調整で具体的に困難に直面したエピソードはあるか?」「欧米の有名大学で学位取得しないと国際機関での勤務は難しいのか?」「データを他者に伝える際に知識や背景のギャップをどのように乗り越えているのか?」はなど、活発なやりとりがありました。
大森氏、久保田氏はともに共通して、「運と縁」ということばによって就職活動や採用活動を説明されました。とはいえ、運や縁を引き寄せるためには、大森氏や久保田氏のように自身の専門性を高めることも必要不可欠です。講師のお二人のすがたをモデルの一つとして、今後も博士人材としてのキャリアについて考えを深めてまいります。
(文責:人間社会科学研究科博士課程後期3年 武島千明)
【お問い合わせ先】
広島大学グローバルキャリアデザインセンター(担当 田中)
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*(AT)は半角の@に変換してください。
TEL:082-424-4564