2024年5月8日、Zoomと対面(総合科学部K210)の同時双方向形式にて、キャリアマネジメントセミナー「教育サービス業界でのキャリア形成」を開催しました。
【講 師】株式会社ベネッセコーポレーション ベネッセ教育総合研究所 小野塚 若菜 氏
【参加者】54名(対面:16名、オンライン:38名)
概要
本セミナーにご登壇された小野塚氏は、学部を卒業されて以降、日本語学校の講師、大学の講師、日本語の検定試験の開発など様々な職を経験されながら、修士号・博士号を取得されました。現在所属されている、ベネッセ教育総合研究所には、博士号取得後の2017年から現在まで勤務されています。
まず、ご自身について紹介されました。小野塚氏は、日本語教育、言語の力の評価・測定をご専門とされています。氏は、ご自身の強みとして①日本語学校や大学など、様々な機関での教育実践経験、②学位、③これまでの研究活動をとおして培った汎用的な研究スキル、④研究プロジェクトで培ったリーダーシップの発揮、の4点を自覚されていました。学位取得後は、ご自身の強みを専門分野にとどまらず、産業界や社会への貢献したい、分野を超えたチームで研究がしたい、という思いを抱かれ、ベネッセ教育総合研究所へ入職するに至ったそうです。
次に、現在の担当業務について紹介されました。ベネッセ教育総合研究所では、「社会課題・事業課題の解決に貢献する研究の推進」、「学術的価値の高い研究の推進」をミッションとして研究業務が遂行されています。小野塚氏も大きく2つのテーマを担当し、研究活動を遂行されています。また、グループマネジメントも重要な業務の一つとして担当されています。ベネッセ教育総合研究所では多様な専門性をもつスタッフが働いているため、それぞれの役割分担をすることも重要な業務の一つとなります。加えて、日常業務として予算管理などの事務的な業務もされています。
このような業務を遂行するうえで、氏が博士課程で学んだことが活かされることは少なくないそうです。例えば、ご自身の修得された研究手法を活用してチーム内の研究を推進したり、専門分野の知識を応用することで新たな研究課題の発見にも繋がっているというお話でした。また、コミュニケーション能力も重要なスキルの一つとして挙げられていました。
これらに加えて、氏が今後必要になると認識されているスキルについてもお話されました。すでに獲得している汎用的な研究スキルは、社会の要請に応じて更新する必要があります。また、組織のなかでも若手を育てる立ち位置になると、マネージメント能力も求められるようになってきます。さらに、組織で働く以上、その一員として広い視野を持つことも必要です。企業で働くうえで、スキルアップやリ・スキリングを継続することの大切さについて、強調されていました。
質疑応答では、「どうやって共同研究者を見つけるのか?」「ベネッセホールディングスは、教育サービス業界の大手企業として、公平性を伴った社会参画をどのように目指しているのか?」「研究課題は研究所側から提示されるのか?」「自ら研究課題を企画・立案する場合、どのミッションをどの程度意識するのか?」「専門分野の異なる研究者で協働することで、難しさを感じたことはないのか?」「現在、小野塚氏は、元々のご専門より広い分野でご活躍されているが、そのためにどのようなスキルを磨いてきたのか?」など活発なやりとりがありました。
ここまでの話を受けて、対面参加者(大学院共通科目「キャリアマネジメントセミナー」履修者)を対象にグループディスカッションがなされました。小野塚氏が提示された「自分の研究の成果や専門知識の社会的価値は何か」「博士課程修了者のキャリアにはどのような多様性が考えられるか」という2つの問いについて、グループに分かれて議論をしました。参加者らは、自身とは異なる専門分野の博士課程後期の学生と議論することを通して、自身の考えを深めていました。また、各グループへの小野塚氏によるフィードバックに深くうなずき、共感する姿も見られました。
小野塚氏は講義の締めくくりに、広い視点をもって研究活動に取り組むことの重要性について強調されました。氏のおっしゃるとおり、博士課程後期に在籍し、学術への貢献を目指して研究活動を進めていると、自身の研究と社会とのつながりについて考える機会が少なくなりがちです。小野塚氏がキャリアのなかで得られた気づきを参考に、今後も博士人材としての強みを探究してまいります。
(文責:人間社会科学研究科博士課程後期3年 武島千明)
【お問い合わせ先】
広島大学グローバルキャリアデザインセンター(担当 田中)
E-mail:wakateyousei(AT)office.hiroshima-u.ac.jp
*(AT)は半角の@に変換してください。
TEL:082-424-4564