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学部長挨拶

木島 正明新学部長

情報科学部長 木島 正明

 クリミア戦争に従軍し、敵味方関係なく負傷兵たちに献身的に尽くしたことから「白衣の天使」と呼ばれたナイチンゲールのことは、皆さんも小さい頃、彼女の伝記を読んで知っていると思います。彼女がクリミア戦争に従軍した経緯や兵舎病院での活躍などは伝記にゆずるとして、ナイチンゲールは看護の経験から、病院での死者の大多数は院内の不衛生に起因すると気づきました。帰国後、そういった状況を分析するために多くのデータを集め、統計的に分析し、結果をわかりやすく説明するための工夫をしました。「データに基づいて現実の問題を明らかにし、それを元に現実を改善する」という考え方は現在では当り前のことですが、彼女はそれを実践し当時の医療衛生改革に大きく貢献しました。このため、イギリスではナイチンゲールを「統計学の母」と呼んでいます。

 さて、翻って現代ではどうでしょうか。我々はインターネットなどをとおして膨大な情報に接することができます。コンピュータを使えば、その情報は簡単に加工されデータとして蓄積することができます。さらに、統計学の進歩とコンピュータ性能の飛躍的な向上および人工知能(AI)などの技術が進歩したため、ビッグデータを高速に分析することが可能になりました。人間の脳を模した人工ニューラルネットワークなどがその例です。ナイチンゲールが聞けばさぞかし羨ましく思うことでしょう。彼女はデータを収集するために膨大な時間と労力を費やしました。また、データ分析に使える統計学も初等的なものだけでした。

 しかし、巨大なデータを蓄積しただけでは何も生まれません。情報そのものには価値が無いからです。データを分析し、それを如何にして知識につなげられるかが問われるのです。ナイチンゲールの偉大さはまさにこの点にある訳です。現代社会の多くの分野で、情報を集め分析し、客観的なデータに基づいて合理的な判断のできる「データサイエンティスト」と呼ばれる人材が求められています。

 この一連の流れを扱うのが情報科学という分野ですが、残念ながら、現時点では成功している分野は限られています。新聞などで目にするのはアルファ碁や自動翻訳などのトピックだけです。コンピュータの性能や保全、データの蓄積方法、AIにおける学習や知識獲得の理論など、まだ十分とは言えません。しかし、情報科学には大きな可能性が潜んでいます。応用分野も多岐にわたります。AIの高齢化社会への適用、投資や運用手法の改善、自動運転、など挙げれば切りがないでしょう。広島大学に新設される情報科学部はこの魅力あふれる分野を研究し、情報という切り口をとおして社会に貢献することを目指しています。意欲ある若者が集い、活気あふれる学部となることを期待しています。

 

広島大学情報科学部長
木島 正明


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