学部長からのメッセージ

法学部長 永山博之 教授

法学部は、社会科学を学ぶ人のための総合的な学部です。広島大学法学部は、法学、政治学、社会学、国際関係論などの多様な分野で教育研究を行う学部であり、経済学系以外の多くの学問をここで学ぶことができます。

わたしたちが、学生に教えようとしているのは、「社会において起こっていることを、正しい手続きと、全体的な視野によって理解する」方法です。例えば、新型コロナウイルス対策が不十分であるという意見を持っていたとすれば、どのような観点から(飲食店の営業制限?一般市民の行動制限?中央官僚機構や地方自治体の仕組み?人々の行動様式や病気に対する意識の変化?)問題を見るのか、社会のどこをどのように変えれば有効な対策になるのか、その対策はどの程度のコスト(費用、時間、社会的説得)で実現可能なのか、ということに配慮しながら、法的、政治的に妥当で、有効かつ実現可能な解決策を考えるということです。

このような「できる範囲で社会をよくしていく」ことは、頭がいい人がちょっと考えてできることではありません。社会の仕組みを知らなければならず、人間の行動様式、その理由、社会を変えようとする時の副作用をきちんと理解していなければ、ただの「意識高い系の思いつき」で終わるだけでなく、社会そのものに破滅的な影響を及ぼすようなことにもなりかねないのです。20世紀の社会的悲劇の多くが、「社会を完全に取り替えることで、よい社会をつくる」という発想から出ていたことを思い返す必要があります。

妥当、有効、実現可能な解決策を考える能力は、社会のあらゆる分野で必要です。法曹、公務員、会社員、教育機関、医療機関、NPOなどの非営利団体職員、あるいはコンビニでアルバイトをしている人であっても、社会に生きている限り、自分と社会の関係を考え、社会をよくすることを考えることは可能であり、必要なことなのです。

わたしたち教員も、いつもこの課題を考えている一人です。みなさんとともに学んでいけることをたのしみにしています。


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