第1回 ベンチマーキング

 法科大学院を取り巻く状況は依然厳しいままです。そのなかで、本研究科は、法曹を養成するプロセスのファーストステージを支えるプロフェッショナル教育を洗練し、学生の潜在的能力を引き出して、法曹の職責を全うできる基本的資質をもった人材に育てることを目的として、教育の質の向上に取り組んでいます。本研究科の現状や今後目指すところを少しお話して、皆さんからご意見等をいただき、より良い法科大学院教育を構築していくエネルギーに変えていくことが必要です。

 本研究科は、これからベンチマーキング手法を取り入れ、一定の期間において具体的な数値目標を達成するため、マイルストーンを設けるとともに、その実現に向けた責任の所在を明確化する、教育改革プランを策定し実行しています。

 目標は司法試験合格率の全国平均超えにおいています。若干卑近な感もありますが、法科大学院が法曹養成の専門職大学院である以上、その最初の関門である司法試験の合格に数値目標を設定するのも当然かもしれません。

 手法ですが、「ベストに学ぶ」ベンチマーキングを用いて、対象のベストプラクティスを抽出して、本研究科の現状をこれに適合させる計画を練り、その実践によるイノベーションを図ります。本研究科は、さる10月20日に神戸大学大学院法学研究科と教育連携協定を締結しました。それは、神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻(以下、「神戸大学法科大学院」とする)が不断の努力をもって実行してこられた教育改革・教育活動改善をベストプラクティスとして選択したことを意味しているのです。これから、私たちも神戸大学法科大学院の授業を参観し共同研究の場をもって学び、自らの教育内容・方法の向上を図りつつ、これを本研究科の在学生の学修力を十分に伸ばせるよう適切に活かしていくこととなります。

 本研究科は、現在、統合教育システムと学習コーチングシステムにより少人数教育を実効化することで、在学生の学修力の基礎を支え、その飛躍的なレベルアップが図れる基盤を固めています。次のレベルアップを引き出すために、神戸大学法科大学院をベストとするベンチマーキングを実践します。そのうえで、法曹養成は司法試験合格に尽きるものではなく、そこからさらにいかなる法曹を目指し成長していくのかが重要ですので、もう一度広島の地における法曹育成の在り方を踏まえた、教育の特色づけが必要となるでしょう。その準備もすでに始めています。

 今後、本研究科が目指す教育プログラムがどのようなもので、それをいかに組み立て実践していくのかをお話していきます。次回は「無礙弁才」です。


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