第5回 令和5年度秋期に修了されたみなさんへ

 みなさんは、広島大学大学院法務研究科・人間社会科学研究科実務法学専攻(法科大学院)が定める所定の単位を修得したことにより、本日、本法科大学院を修了され、法務博士(専門職)の学位を取得されました。誠におめでとうございます。
 法科大学院の単位認定は厳格であることが求められていますから、みなさんは、入学してから修了するまでの間、厳しく地道な努力を積み重ねられたものと推察いたします。教職員一同とともに、みなさんのたゆまない努力に敬意を表しますとともに、心からお祝い申し上げます。

 在学中受験が開始された今年度、全国では1000名を超える在学中受験者が司法試験を受験しました。在学中受験の開始により法科大学院の志願者も増加に転じ、法科大学院修了者の就職状況も改善されているようです。法科大学院制度は創設されて20年が経過し、今、まさに新たなステージを迎えようとしています。
 広島大学発祥の地である東千田キャンパスは、「法曹養成を核とした人文社会科学系の新たな拠点」として整備されました。多くの学部学生のエネルギーに満ち溢れるようになった本キャンパスでは、法学部との一貫教育も始まりました。法曹を志そうとしている法学部法曹コースの学生も、司法試験に向けて更に研鑽を重ねられるみなさんの背中を見て、応援しています。

 法曹を巡る環境は変化を続けています。社会の多様化・複雑化に伴い紛争が増えたことにより、そのニーズも拡大し、民事訴訟や企業法務のほか、教育行政等の分野での活躍が期待されています。
 こうした多様な分野で活躍する法曹に求められる資質は、専門的学識だけではありません。
 法曹は司法の運営に直接携わるプロフェッションですから、「社会生活上の医師」として、各人の置かれた具体的な生活状況ないしニーズに即した法的サービスを提供するためには、幅広い教養と柔軟な思考力、説得能力や交渉能力だけでなく、社会や人間関係に対する洞察力、豊かな人間性や感受性、共感力や行動力も求められます。相手の気持ちを汲み取る能力や体力もまた、法曹に必須の資質といえます。
 法科大学院を修了したみなさんには、予備試験合格者とは異なり、こうした資質をもって法曹として活躍されることが期待され、法務博士の学位を取得されました。

 われわれは、今年一年、これらの資質を学生のみなさんに更に深く修得いただくため、カリキュラムを変更し、授業内容に一層の工夫を加えて改善に努め、みなさんが司法試験に合格できるよう、応援に努めました。リーガルフェローの先生方にも献身的なゼミ指導をいただき、みなさんの合格を期待しています。
 こうした期待に応えて当初の目標を実現できるよう、いっそう精進を重ね、高度専門職業人として社会的・国際的に活躍されることを祈念し、はなむけの言葉とさせていただきます。
 本日は、誠におめでとうございました。

令和5年9月20日 広島大学法科大学院長 周田憲二


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