第25回  2018年 新年の抱負

 新年、明けましておめでとうございます。
 本年もご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

 2018年、広島大学大学院法務研究科の抱負です。

 教育改革の一環として、この4月より新たなカリキュラムに基づく教育プログラムがスタートします。これは、2016年に教育連携協定を結んだ神戸大学LSの全面的な支援を受けて、抜本的なカリキュラムの改編を行いました(神戸大学LSとの教育連携については、文部科学省HP上の「法科大学院公的支援見直し強化・加算プログラムの審査結果について」の大学間連携をご覧ください)。この教育プログラムを実効的に運用するうえで、その教育成果を高めるため、教育の内容だけではなく、教員の教育技量の質の向上も欠かせません。技量向上に向けた取組も、神戸大学LSとの教育連携によるかなり踏み込んだ具体策も含め、実践してまいります。改革を行いながらその成果を確認しつつ、さらなる改革・改善策を取りいれて、改革された教育システムやプログラムが確固として構築・実践されることが重要な目標となります。そのなかで、今後、司法試験合格率等における目標達成への確かな歩みとなる結果も残さなければなりません。

 教員が教育そのものを学び続けるという実践行動により、本研究科が現在よりも自由で闊達でありながら求道者の厳しさをもつ空間となることを期待しています。学生の皆さんにも(当たり前ですが)学び続けることを求めますし、それができるように学修の継続を支える奨学金を自らの努力の結果(その成績が基準ラインを超えられるか否かによる)に応じて支給する新たな経済的支援も4月より開始いたします。

 もう一つ、法曹志望者層拡大の目標への布石です。知識を覚えさせながらその知的能力を高めるという教育方法の弱点を解消する教育プログラムの地域展開です。多様な法曹を育成するうえでは、従来の教育法がボトルネックとなっている感がありますので、原理原則に馴染ませながら紛争を解決できる知的能力を培いそこに法的知識を補充していく新たな教育方法が必要だと思います。

 釈迦の十大弟子アーナンダの逸話です。アーナンダは、釈迦の遊説に随行し、最も多く釈迦の説法を聞いたことから、多聞第一と言われます。釈迦の説法を多く聞けば「悟りを開く=仏智を得る」のが速いのではないかと思われますが、実際には十大弟子では最後にようやく悟りを得たと言われています。仏智を得た釈迦は縁起の法をはじめとする存在の根本原理や人間の実相等を対機的に説かれますので、その説法はその時その場の聴衆に心に残るものであったでしょう。それでも、それは釈迦が得た知識を授かったにすぎず、仏陀の智慧となるにはアーナンダ自らが生み出すプロセスを省くことはできなかった(ことに加え、知識が智慧の創出を邪魔した)のではないかと思います。智慧は、ソクラテスも指摘する通り、自らが生み出すものであって、持っている者から持たざる者に受け渡しのできるものではないのでしょう。発達した創造的な才能で社会や自分の問題に対する問題に新たにうまく解決する知的能力は智慧獲得(プロセス)から生まれると思います。

 次回は「学修の喜び」です。


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