第32回 平成31年度入試の変更点

 現在、本研究科は、教育システム、教育内容・方法及び組織の抜本的な改革を実施しています。この4月からは新カリキュラムに全面的に移行しました。

 間もなく第1タームが終了しますので、ターム制に代わった授業科目がどれほど凝縮され密度の高い学修サービスを提供できたのか、新たに導入した繋ぎ科目では、学修法に焦点を合わせてスムーズに質の高い学修に繋ぐ道を拓くことができたのかなど、その検証を行うのが楽しみです。

 もちろん、試行錯誤はあると思います。よかれと考えて試したがさほどの効果を得られなかったとしても、そこから得られる次への改善・工夫の知恵は貴重な財産となります。次の挑戦では大いなる成果が上がると期待できます。受講生が割を食されるのではとご心配の向きも、若手弁護士による学修指導ゼミ(自主ゼミ)や個別面談で十分に補われ、むしろ余りがあるかもしれません。やはり、改革には慎重な二段構えが必要です。

 入試も変わります。平成31年度入試(平成30年度に実施される入試です)では、全国統一適性試験が実施されませんので、これに代わる「資質確認」を行います(そのほか,刑訴法が法律科目試験から外れる,3年コースの面接がなくなる,すべての試験が土曜日1日で終了するなど変更点があります。間もなく公開の募集要項でご確認ください)。

 小論文では課題文の読解に基づく論述から一定の資質・能力を確認しています。「資質確認」では、身近な問題あるいは抽象性のあるテーマを問います。どのような切り口で論述するかという具体的な問題設定から論理を組み立てて展開することを期待するものです。さらに問題文で異なる考え方や見解に言及することを求めるなど解答に条件を付するならば、多角的あるいは複層的な問題分析の視点を問いつつ、創造的(想像的という面もあるでしょう)な思考がどこまでなしうるかを確認することもできます。

 本研究科は、未知の問題に対処できる法曹を養成するという教育理念を掲げています。これまで見たこともない問題にいかに取り組みその解決法を生み出すのか、そのためにはその時に自分に何が必要なのか、では、現在、自分はその時のために何をなしていなければならないのか・・・、本研究科もこれらの課題を常に考え取り組んでいます。

 既知の問題への対処は、前例・先例に倣うことで一定の結果を確保できますから、日頃から時間、エネルギーと資金を投入して情報の収集を継続することが課されます。知識の量が決め手になります。他方、未知の問題では、あるべき姿が問われます。その問題の解決はどうあるべきなのか、それが想像できればその理想の姿に向けて解決の設計図を描きます。高い倫理性を持ち、創造的な思考力を柔軟に展開することによって、その設計図はできあがるでしょう。私には、この解決の道筋を示してくれるのは「教養」ではないかと思われます。

 紛争解決あるいは紛争の事前解決が求められる法曹は創造的な思考力を柔軟に展開できる力とそれを可能にする心理的なゆとりがあってほしいと思います。法曹を養成する責務を担う教育機関としては、そのプロセス教育において、創造的な思考力につながる「教養」を修得できる工夫を凝らさなければならないでしょう。

 資質確認はそのようなプロセス教育に挑む素地があることの確認です。その確認にもとづき、事前(入学前)学修指導として、論理的思考力をより一層鍛えるため、体系化による知識の整理法を学ぶ機会を提供します。入学後は、知識と知識をつなごうとする思考習慣を身につけながら,スパイラル教育で学修を積み上げます。皆さんは「学修の転用・活用」による創造的な思考力を修得することで夢を実現できると確信しています。

 次回は、「心に残る言葉」です。
 


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