第44回 2019年 年頭にあたって

 新年あけましておめでとうございます。
 本年が皆様にとって実り多き一年となりますことを心よりお祈り申し上げます。

 今年は3つのミッションを成し遂げたいと考えています。

 1つは、法曹というプロフェッショナルを養成するため、専門職大学院としてプロフェッショナル性を育成することができる教育の場を作り上げることです。プロフェッショナル性は、高度な専門的知識を習得することだけではなく、それに加えて(というよりそれ以上に)、自らその学びの質を高める方法を体得し実践できること(=知性の錬成法)が必要であり、また、自らの実践を振り返って、より高められる点を見つけ出し、改善の努力を積むこと(=反省の技法)が求められます。この実践は、教育の場を提供する教える側の義務であり、その履行を通じて学ぶ側に伝え、とかく安住してしまいがちであることに気づかせるべきだと思います。

 学びの機会に相変わらずの授業を行い、学び手に「またか」と思わせることがないよう、最新の情報に基づき工夫を凝らして基礎・基本を十分に理解してもらうことが最優先とされなければならないでしょう。これは教える側のコンピテンシーにかかわる問題でもあります。最善の授業ができれば工夫の必要はないのかもしれませんが、そこでいう最善の授業は学び手の一人一人がその授業で自学自習をなすための進展性のある気づきを得られるものだと考えますが、それはかなりの難題です。

 時々、今日の授業はかなりうまく展開できたと思うこともあります。しかし、その授業の復習課題に提出されたレポートを見ると、かなり強調し論理的につながりやすく説明したにもかかわらずそこがうまく展開できていないものがいくつか出てくることがあります。そのときに自分の授業の感触を優先して、「授業を集中して聞いていなかったな。折角の授業を無駄にして。」と思うこともあるのですが、その責任を100%学び手に押し付ける思いに駆られた時ほど自分自身が自分の想いに縛られて身動きが取れなくなることがあります。授業の振り返りが自由にできずに改善工夫を真摯になすことができないのです。「これではプロとは言えないな。」と思います。そこで50%責任論を口癖にし、自分自身に十分に納得させるようにしています。

 2つ目は、神戸大学法科大学院との教育連携に基づく新カリキュラムが導入され、教育改革が第2ステージに進みましたので、新カリキュラムによる教育成果を確実なものとするための技量の向上を実践の中で目指すとともに、教育システムやプロセスのさまざまな点を検証したうえで見直すべき点は速やかに対応することです。

 神戸大学法科大学院から多くの貴重な教育上の助言や支援をいただいています。神戸大学法科大学院の諸先生方に心から感謝申し上げます。ありがとうございます。

 神戸大学法科大学院からの助言や支援を最大限に活用して、法曹を目指す皆さんにその夢を実現する道を開くことができるよう、その能力を開花させる教育を実施しなければならないと思います。

 最後に、法曹を養成する、とりわけて多様な法曹を育てるためには、いろいろなバックボーンを持った、法曹を志そうとする人材を創出することが不可欠ですので、法曹志向教育と法曹養成教育を接いだプロセス教育を構築し、特に中四国エリアにおいてその教育実践の機会を設け、その教育成果を検証することです。

 以上、3つのミッションを達成できるように、柔軟性を失うことなく、手を緩めることもなく、布石を生かした中盤戦へ着実に打ち進めてまいりたいと思います。

 本年も、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

 次回は「意味を探る」です。

 


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