第55回 謹賀新年

 新年、明けましておめでとうございます。
 旧年中は、多くの皆様方より貴重なご意見、ご助言を賜りましたことに心より感謝申し上げます。ありがとうございます。十分にご意見等を活かせられていない点も多々ございますが、専門職大学院として、有為な人材が法曹への道を歩めるよう学修をしっかりとサポートし、自らに秘められた能力の開花による成果を体験することを通じて、自ら学び考え共創生を心掛ける法曹を育ててまいります。
 本年もよろしくご指導、ご鞭撻のほど、お願い申し上げます。

 年明け早々に驚くべきニュースが次々届き、中東情勢は不穏な空気に包まれ、一気に緊迫しています。報復が声高に叫ばれていますが、怒りや憎悪によって事態を展開させて行くのは、怒りや憎しみの連鎖となって、破滅ヘの道を歩む、歩まさせられるでしょう。破滅を志向する人はいないでしょうが、目先の利を追うと、それが無尽蔵に生み出されるのでなければ、奪い合いという負の連鎖により最後の一つまで争いの種となるでしょう。

 分かち合うことにより、これまで何らも得られなかった手に何がしかを手渡すことで将来そこから新たなものが生み出されるとの期待が膨らむ一方、既存の取り分が減ることを甘受するよう求められ、不満が生じる手もあるでしょう。結果に対して迅速さと効率性が最優先にされる価値観が蔓延する場合には、時間を経て得られる成果が待てずに、現在目の前にあるもので最大限の満足を得ようとして、他を否定・排除してしまおうとの力学が働いてしまうように思われます。

 分かち合いによる損得をお互い様として受け入れる行動が生み出される軌範はいろいろと思い浮かぶでしょうけれども、畢竟、西欧では哲学であり、東洋では智恵であると思います。「知」を愛し追い求めるなか、世の実相を正しく認識し思念するなか、自らが感じ取り理解することにも活かされる知の実践を経て、その行動が従うべきルールとして獲得され修得されなければならないでしょう。そのため、学によって得た知識を実践経験を通じて行動にいかに反映させるのかを考え、自らの軌範にしていくプロセスを学ぶ機会を提供することが教育の場に求められ、その可否が教育の質を決するといっても過言ではないと思います。

 次回は「自分の頭を使って本を読め」です。


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