第63回 窓辺から青空を

 気が付けば今年もあとわずかです。感染症対策に追われつつも、これまで培ってきたことをこの期に失うことがないように、むしろより密度の濃い法曹養成プロセス教育にふさわしい教育方法が構築できないかを考える日々でした(というか、まだまだ現在進行形です)。

 広島市では12月に感染拡大が深刻化しているなかで、その中心部にある東千田キャンパスは、対面式授業を維持しつつも、感染発症例が報告されない状況が続いています。これは偏に学生、教職員の皆さんが感染防止対策を徹底していただいたことの賜物と感謝しております。ありがとうございます。変異種が広がろうとしておりますので、今後もこれまで以上にハイリスク環境や行為に留意され、慎重な対策をお願いいたします。

 本年は法科大学院にとっても、大学院再編による、人間社会科学研究科という新研究科開設の初年度でした。これまでとは授業カリキュラムのみならず運営等でも大きな変化がありましたが、研究科長をはじめ執行部の皆さんが難しい環境の中で巧みに導かれたことで滞りなく法科大学院の教育改革等を進めることができましたことにも感謝申し上げます。

 法科大学院の教育改革も、神戸大学法科大学院との教育連携から学んだことを教育課程に取り込みながら、オリジナルな教育プログラムの定着・展開を、少人数教育の実効化とともに実施することで、一定の成果につながりつつあると思います。そのような教育の見直しが具体的に進展するなかで、法学部との自学連携による法曹養成連携教育が実現に向け最終段階に移行できそうです(まだ文部科学省と相談中ですが)。今後、法曹希望の学部学生の皆さんに法科大学院オリジナルの教育を提供してその志を実現するうえでお役に立てるのを楽しみにしています。

 最後に教育改革の現状を再度観る機会がありましたので、その個人的な評価をその記述を引用することで、ここに記しておきたいと思います。

〇統合型教育プログラムとしては、これまでの学生の学修傾向を大筋で捉えたうえで、まず知識授受教育と知識活用教育との融合から始め、法的情報を単に記憶に定着させて知識とする受動的な学修から、事例解決に利用できるように整理する工夫ができる学修へと幅を広げ、さらに個別的学修指導(学修コーチングシステム)を受けて、問題発見教育への移行をなしうる教育基盤の整備を行っています。この教育基盤の整備が、「学修の転移」と「知識の動点化」の2つを経験させる教育方法の導入です。

〇法的情報は知識として紛争解決の手段を複数用意するように活用するために集積・整理するので、その目的である知識活用そのものを同時に体験させることで、学修上の工夫を試みさせるというのが第1次教育転換です。ついで、知識活用のモデル提示も暗記の対象にしてしまう受験勉強型の学修を転換させるために、現在提示される知識が到達点ではなく、すぐにでもある動線上あるいは別の動線上を移動し進展することを学ばせる目的でのケースメソッド方式の導入が第2次教育転換です。さらに、学修の転移・活用のための第3次教育転換を時宜に応じ展開します。

〇法的情報が動点であることを認識することで、表層的な理解よりも基礎領域の深い理解を目指す学修が意識づけられ、法学未修者でも、学修の転換が自らを成長させるという確信と自信で、少々失敗を重ねても最後に必ず目的を達成できるという強い意志から司法試験合格を勝ち取っています。この学修の転換は学生一人一人の学修傾向によってかかる時間が違い、以外と時間がかかることも多いのですが、法科大学院修了後最初の司法試験に合格できるように学修修得をできるだけ早める教育上の工夫を重ねていきます。

 この一年間、御指導、ご鞭撻を賜りましたことに、心より感謝申し上げます。
 今後ともよろしくお願い申し上げます。

 新しき一年が皆様にとって幸多きことを心より祈念いたします。

 次回は「智心③」です。


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