第64回 新たな年に-光と影ー

 本日2月3日は立春です。旧暦による九星では、本日から六白金星の新たな年が始まります。その象意は収穫であり、1つの生命のサイクルが実をなすことによって形をなすとともに、次に生命のサイクルを生み出す準備をするために力を蓄えつつ、創意工夫により、次の収穫につなげていく時期でもあります。収穫に喜ぶだけではなく、次を見据えて動き続けることが必要です。また、辛丑歳ですので、次への備えは抜本的な見直しを行い改革・改善の道を自ら作っていくことが求められます。そこでは向かうべき目的地の決定と舵取りが重要ですから、今一度、現状を省察し、目指す目標を確認して調整いただきたいところです。
 
 新たな年を迎えても、昨年来の新型コロナウイルス禍は感染拡大が沈静化しつつあるものの、主たる地域で緊急事態宣言が継続され、さまざまな経済的な負担が深刻化しており、まだまだこの災厄の影響が続きそうです。また、これまで世界各国を動かしてきたルールが一時的であれ放棄され、主要国であっても自国の利益を優先して動いてきたことが情勢の不安定要素となっていますので、小規模であれ不穏な動きが繰り返されるのではないかとの懸念もあります。

 全体状況がこのような不協和音を奏でつつあるがゆえに、一人一人が懸命に生きるのにもマイナス影響が及び、いろいろな困難や壁が現れることで、目標や夢が実現できないなど苦悩することが多いかと思います。実際、「どうしてこんなに次々と問題が起こり、ほとほと苦労させられるのだろう。少しは順調に物事が進んでも良いはずなのに・・・」と思うこともあります。
 
 しかし、困難な状況によってはじめて磨かれる人間性もあります。優れた業績を上げた方々から、常に順風満帆で悠々と生き活動してきたということを聞いたことはありません。皆さん、一生のどこかでたたきのめされるような逆境に立たされ、特にまだひ弱な少年・青年のころ不遇であっても、そこで斜に構えてひねくれるなどすることなく、未来を見据えて明るくすがすがしい気持ちを持ち続けることで、チャンスに恵まれ、それを掴んで逆境に打ち勝ってきたと自らの歩みを語っておられます。

 逆境や失敗を乗り越えてきた人は人間として魅力的であるからこそ、その幅広さや重厚さが人を惹きつけチャンスを得ていくのでしょう。逆境を抜け出そうと計画を立て行動することで、また、それでも思うようにいかずとも耐えることで、さらに、失敗を経験して他人を真剣に思いやることを知って他者への感謝が先立つようになることで、人間が鍛錬されるのではないでしょうか。

 逆境で、あるいは数度の失敗で、なんで俺だけがなどと考え腐っていたのでは、人間を陶冶する機会を失って、まさに敗北者になってしまいます。

 失敗、逆境あるいは不遇が人の真の価値を輝かせる方向に導いていくと思います。先達の心の持ち方が1つのヒントです。気持ちですので、自らが変えようとすれば変えることができるはずです。影あるところに光ありですから、心に影を映さず,光で照らしましょう。一条の光が無明を打ち破るのです。仏法では、在家修行者が徳を積む方法の1つで誰でもできるものとして、無財の七施が説かれますが、こういうときに活きてきます。

 次回こそ、「智心③」です。


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