新入生を迎えての研究科長挨拶

 皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。皆さんはもちろん、皆さんを支えておられるご家族の皆様におかれましてもお喜びのことと存じます。

 広島大学大学院法務研究科は法曹養成を目的とする専門職大学院です。皆さんは、混沌とした社会における一条の光とならんとして法曹を目指す、大いなる志をもって、本研究科に入学されたことでしょう。皆さんのその志に心より敬意を表します。

 皆さんがその志を、その夢を実現していただけるように、本研究科の教職員は、一丸となって、皆さんお一人お一人をサポートしてまいる所存です。皆さんは、安心してあらんかぎりのエネルギーと時間とを日々の勉学に傾注していただき、法曹への道を着実に歩んでください。

 法科大学院で学ぶうえで、一つ、勉強法につきアドバイスをしておきます。

 法科大学院では法的思考力、特に法的論理展開力を修得することがもっとも肝要です。思考は、本来、秩序づけられています。それが夢想や妄想との違いです。他人の思考は、その頭の中で起こることですので、目に見えません。そこで、思考した内容を文章化してもらうことで、その論理の秩序づけを確認できます。これにより、思考は、精査を受けて、賛同や批判の対象となり得るのです。また、文章が論理的であるというのは、頭の中で組み立てられた思考そのものが秩序づけられていることの結果ともいえます。

 そこで、法的思考力を修得する際には、頭の中に思い浮かぶことが必ずしも順序立てて綺麗に流れでてくるわけではないですから、これを整理する、秩序づけのための道具を自分で工夫して作り上げることが必要です。自らの思考の客観的分析が可能となる「見える化」を図る、構想や展開のフレーム(型)を自分の思考の武器として用意するのです。雑多に思いついた内容をこのフレームにあてがうことで、自分の思考がまとまっているのか、考えが及んでいない点がないのかを確認でき、次に思考を練るために必要な作業が明らかになります。これらの作業のヒントはテキストや授業等で見つけられるでしょう。

 自分で思考のフレームを試行錯誤し工夫を重ねてこそ、自分の頭の中に、思考の客観性や実証性を与えてくれる思考回路が漸く切り拓かれるものです。その回路に何度も何度も(法的問題や課題を考えて)さまざまな思考を流し込むことで、回路の錬度を上げます。いつでも法的な問題を考えるときには意識せずとも自然とその思考回路を通過させ、その秩序づけがなされる状態を目指してください。

 今この時に、皆さんにアドバイスできることは、思考回路を作るのだという意識をもって常に勉学に臨むこと、この一点です。

 では、夢の実現に向かって、共に歩みましょう。
 

                                 広島大学大学院法務研究科長
                                          秋野 成人

 


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