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依頼者から、話しやすかったといわれる存在でありたい

上西 ともみ

ひまわり法律事務所 弁護士

上西 ともみ さん

立命館大学法学部を卒業した後、広島大学法科大学院へ進学。その後司法試験に合格し、司法修習期間を経て、ひまわり法律事務所に入所。「街弁」として市民に寄り添える弁護士になるため、日々研鑽している。
高等学校まで広島県内で過ごし、県外の大学から、広島へ戻って広島大学法科大学院へと進んだ上西さん。大学生時代に入っていたサークル「法律相談部」の経験が今につながっている。サークル活動において、市民の方から法律相談を受け、OB弁護士や教授の助言を参考に、相談に対し回答した経験は、弁護士の業務と近いもの。皆さんが抱える問題を法的に解決していくという弁護士業務を肌で感じ、弁護士を志す。地元広島で新たな一歩を踏み出した上西さん。その彼女に第一線で活躍する弁護士の仕事について尋ねてみた。

皆さんが抱えている「問題」を法的「解決」へと導く仕事に私は従事していきたい

Q. 法曹という仕事を選んだきっかけ

上西:高校までは、特にどんな職業に就くかイメージがなかったことから、将来の選択肢の幅が広がりそうな法学部に入ることにしました。大学では、(法学部は単位が取りにくい、と大学の友人に聞いて、萎縮してしまい、先輩方が勉強を教えてくれるという評判を聞いて)法律相談部に入ることにしました。この部活では、市民の方から法律相談を受け、OB弁護士や教授の助言を参考に、相談に対し回答をしていました。本当に今行っている、弁護士の業務と近いものがありまして、こういう風に、皆さんが抱える問題を法的に解決していくという弁護士業務を肌で感じ、弁護士を目指すことにしました。

Q. 主に扱われている案件の分野や取組内容について教えてください。

上西:私の事務所は、いわゆる「街弁※」といって、相続、交通事故、離婚、債務整理、企業の方から契約書のレビューを行う、相隣関係、刑事事件等、様々な分野を取り扱っており、国選弁護をやることもあり、特に決まった分野をよく扱うということはありません。本当に幅広くやっているというイメージです。様々な分野の相談がくるので、それぞれに対応する事は大変ですが、多くの引き出しがある弁護士になりたいので、一つ一つ丁寧に処理して、身につけていきたいと思います。
※街弁:小規模な法律事務所に所属し、主に地域内に関する案件を担当する弁護士

「女性」弁護士であることも、大変意味があることだと実感

Q. 法曹になって良かったことは何でしょうか?

上西:一番大きいのは、自分で考え、意見を述べ、自分なりに行動して、結果の獲得に向けて自分で動けることです。自分の働きの結果、依頼者の方の問題や紛争が解決をしたときに、依頼者の方から「ありがとう」とか、「よかったです」という風に言われた時(依頼者から感謝されたとき)は、達成感・満足感があります。また、女性の依頼者から、「女性弁護士が対応してくれたので、話しやすくて良かったです、聞いてもらえるだけでもすごく安心しました」とおっしゃる方もいらっしゃるので、女性の弁護士であることも、大変意味があることだと実感できました。

Q. 女性弁護士が少ない点、なにか改善する方法はあるでしょうか?

周田:今のお話に関連してもう少し詳しくお聞きしたいのですが、女性弁護士を増やしましょうという動きが、日本弁護士連合会においても広くあるのですけれども、未だ女性弁護士、とりわけ広島の弁護士の割合が十数パーセントですよね。なぜ少ないと思われますか、どうしたら増えると思われますか(参考:弁護士会別会員数(女性比率)広島16.7% 全国20.1% 日本弁護士連合会出展2024.3.1現在)。

上西:これはとても難しい問題で、広島の弁護士会の中でも、大きく取り組んでいる問題かなと思います。やはり弁護士をする、個人事業主として働くことに対して、女性の学生さんからすると不透明であると、やっていけるか不安だという気持ちが、大きいのではないのかなと思っています。実際弁護士になられた方も少ないので、どうやって働いているのかという辺の発信がなかなかできていないところもあるではないのかなと思っていますので、その辺の広報をうまく学生の皆さん、中学生・高校生・大学生の皆さんに、お伝えできたらいいかなとは思っています。

Q. 法曹になるまで、もしくはなってから、困ったことはありますか。

上西:弁護士になって、今2年目ですが、1年目の時は、正解を探してばかりでしんどかったなと思います。試験勉強の際は、問題に対して、テキストや問題集に答えがありましたが、弁護士になると、そのような答えはありません。回答がない世界、ある程度裁判例や学説でこうなっていますという回答があったとしても、自分の依頼者にとって、何がベターなのかという回答というのは、基本的にはないかなと思っています。自分が行ったリーガルリサーチに自信が持てないことが多かったです。回数を重ねることで、今は、この分野なら、このように調べれば良い、という当たりが付くことも増えてきました。断定的な回答が出せないこともありうると、切り替えられるようにもなりました。
 受験時代は、体調が悪いことが多く、司法試験を受けられるのか、法曹としてやっていけるのか不安になることもありました。親の協力もあり、体調が回復し、受験する事が出来ました。

自分なりのリフレッシュ方法を、見つけてもらいたい

Q. 司法試験受験に向けて、ストレスを抱える学生にアドバイスはありますか。

周田:司法試験を受験される時に、直前にコロナの行動制限が起こって、授業も全部やめて、おそらく相当大きなストレスがあったと思うのですが、ストレスを学生さんは感じている、高校生もおそらく受験に向けて相当なストレスを抱えている、どうやったらストレスに対応できるのでしょうか。何か良い方法はないでしょうか。

上西:ストレスがあるのが当たり前って、割り切っちゃうところもあるかなと思います。
 実際社会に出ると、いろいろな考え方の人がいますし、たくさんの性格の方もいらっしゃいますので、そこは割り切り、自分の考えと合わないのだとか、言われてしんどかったことがあっても、こういうものだなっていう風に思って割り切っていくことかなと思います。ただ、やっぱりしんどい気持ちがあるというのは、当然のことと思います。その時はやはりリフレッシュをしてみることかなと思います。私はやはり司法試験受験時代は、ずっと実家で生活していました。ゆえによく家族と話をしていました。今日あったこと、どんなことがあったとか、今日の食事がどうだとか、当たり前のことなのですけど、そういう人とのコミュニケーションを、しっかりしていくことかなと思います。同期のみんなと話をしたり、先輩後輩と意見交換してみたり、自分なりのリフレッシュ方法を見つけてもらいたいと思います。

Q. 法曹の仕事を行うのに、心がけていること、または必要と思うことは何でしょうか?

上西:2つあるかなと思っています。
・人の話、依頼者の方及び相談者の方の話を丁寧に聞き取ることを意識しています。
女性の依頼者から、話しやすかったと言っていただけることがあります。どうしても、弁護士に対して敷居が高い、間違った事を言ったら恥ずかしい等、距離感を感じ、自分の希望や事情を詳しく話せない人もいるように感じます。相談者が感じる違和感や不満は、紛争の解決にとって、重要な意味があることもあります。なるべく、話しやすい雰囲気で接し、相談者の思いや事情(違和感や不満)を丁寧に聞き取ろうと気をつけています。
・問題や紛争の解決をすることを意識しています。
依頼者の要望に応じて、依頼者の言いたいことだけを主張するだけでは、紛争を拡大させるだけの時もあります。依頼者の希望実現に向けて、どのような点が真に問題になっているか洗い出し、どのように事件を進めればスムーズに問題・紛争が解決するか様々な選択肢を想定して行動することを意識しています。

Q. ロースクールを目指す学生さんに必要な資質とはなんでしょうか。

周田:上西先生が、ロースクールに在学されていた頃というのは、一学年が実はロースクール始まってから一番少なかったのです。法曹として求められる資質、紛争拡大しない、お話をよく聞く、そういった事柄というか、努力したらできるはずですけれども、ロースクールを目指す学生さん、どんな資質を持っていたら、このロースクールに行っても将来、法曹として活躍することができるでしょうか。

上西:何の資質が必要なのか、何か決まったものが必要だとは思っていませんけれども、そういうものを探求する姿勢っていうのは必要なのかもしれないです。学生の頃から自分が将来弁護士、弁護士に限らず検察官・裁判官になったらって、みんな考えられると思いますけれども、そのためには何が必要なのだろうって、考えてみることかなと思います。私は私なりに今さっき話したみたいなことが、必要かなと思っていますけれども、それぞれがそれぞれなりに考えればいいかなと思います。

Q. 仕事とプライベートのバランスはいかがでしょうか?

上西:仕事は、平日の日中は、期日や打ち合わせ電話対応がメインで、夕方からは、書面の作成をするというスケジュールが多いかと思います。事務所が休みの日(土日祝)は、平日に出来なかった書類作成をすることもありますが、基本的にはプライベートの時間を過ごしています。
 プライベートでは、飲みに行ったり、旅行に出かけたりして、リフレッシュしています。先輩弁護士と一緒にゴルフや山登り等に行くこともあります。

業務だけでなく、子どもの権利に関連する活動も行っています

Q. これからご自身が目指す将来について教えてください。

上西:まず大前提としては、一人前の弁護士というのが、一体何を指すのかというのはありますけれども、やはり一人前の弁護士になりたい、いろんな幅広いジャンルの、法律問題を解決していける能力を持った、弁護士になるということが一番だと思っています。
 そのために勉強もしなければならないと思いますし、経験も積んでいかなければならないなと思っています。経験にプラスといいますか、プラスアルファというところで、「子どもの権利委員会(広島弁護士会)」に所属しており、業務だけでなく、子どもの権利に関連する活動も行っています。
 令和4年に改正された児童福祉法では、新たに、児童相談所等は入所措置や一時保護等の際に児童の最善の利益を考慮しつつ、児童の意見・意向を勘案して措置を行うため、児童の意見聴取等の措置を講ずることが規定されています。これを受けて、広島市でも、昨年から、児童の意見・意向表明や権利擁護に向けた必要な環境整備として、児童相談所における意見表明支援事業を始めました。私は、この事業の意見表明支援員として活動しています。子どもの意見をどのように聴取し、児童相談所に伝えるか、手探りでありますが活動をしています。日常の業務だけでなく、ライフワークとして、このような活動を継続して行きたいと思います。

Q. 広島大学の法科大学院で、学んで良かったと思うことはありますか。

上西:学生が少ないことから、先生方に自分の名前を覚えてもらって、「大丈夫か」という風に、先生から話しかけていただいたりしました。また、先生方に対して授業等でよく分からなかった点について質問をしやすかったです。そういう関係の近さがあったことは大変感謝しております。そこでもらったアドバイスとかによって、自分の知識は増えたかなと思っています。
 そして、弁護士ゼミを受講し、今活躍されている弁護士さんから、実際の答案を書く際に、論理的にものを書くときにはどういう風に書くべきか、頭の中をどう整理すべきかを学べました。先輩を含め、学生同士でコミュニケーションを取る事が多かったことから、ストレスの多い受験勉強時のリフレッシュになっただけでなく、各論点について学生同士で意見交換をすることで、理解を深めたり、どのような勉強を行うべきかについても、話し合ったりすることができました。昼ご飯や晩ご飯を食べながら、法律の勉強の話しもしたり、先輩たちから、自分たちはこの時期こういう勉強していたよとか、こういう論点は意識的に今勉強した方がいいのではないかという話をしていただき、来年になったら、自分はこうならなきゃいけないんだから、今こういう勉強しておこうかなとか、どのくらいの時期に、どのような勉強をするべきか等見通しをもって勉強することができ、とても重要だったと思います。
 また、「エクスターンシップ」という科目では、広島市内の弁護士の元で、5日間研修をしました。弁護士として、どのように働くのかイメージが出来ましたし、今でも配属先の事務所の先生方にはお世話になっています。

自分で考えて行動したことについて、自信をもって、試験に臨んで欲しい

Q. これから法曹を目指す方へメッセージをいただけますか。

上西:やはり試験を受ける上で、私も本当に心配だったし、受かるかどうか不安でした。
 でもやはり法曹になってから思うのは、自分で考えて行動したことについて、自信をもって、試験に臨んで欲しいなと思います。日々の成績や司法試験に受かるかどうかが心配になることも多々あると思います。ロースクール生の人と話をしていると、「受からないことを前提にしていませんか」、というような行動が見られるなと正直思います。そんなに間違ったことはないですし、それぞれ正解はないので、そこは自信を持って頑張ってほしいなと思います。
 しかし、弁護士になるためには、依頼者が直面する問題や紛争の解決をするために、積極的に動く必要があります。司法試験の勉強をする段階から、周りにアドバイスを求め、自分の考えたことに自信をもって行動するのが良いのではないでしょうか。
 また、現在は、新人弁護士が都会で登録することが多く、地方での新規登録が少なくなっています。私は、地元の広島で、弁護士をしていますが、広島弁護士会は、都会と比較して人数が少なく、弁護士同士の交流が盛んなので、事務所の違う弁護士とも一緒に仕事をする機会もあります。是非広島での弁護士登録も考えてみてはいかがでしょうか。
 

周田専攻長と上西弁護士

周田専攻長(法科大学院長:撮影当時)と

2024年2月1日取材
取材場所/ひまわり法律事務所


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