ポリオレフィンの機械的強度を飛躍的に上昇させる添加剤を開発

本研究成果のポイント

〇ポリプロピレンにわずか5重量%添加するだけで、破断強度を1.5倍に強化できる添加剤を開発しました。機械的物性の低下した廃プラスチックのリサイクル等への応用が期待できます。

概  要

 アイソタクチックポリプロピレン(iPP)は最も広く使用されている熱可塑性樹脂の一つで、世界で生産されるプラスチック原材料の約20%を占めています。近年、環境保全と経済安全保障の両面から、プラスチック廃棄物の資源循環が求められています。iPPのリサイクルにおいては、機械的処理や熱処理を伴う工程を繰り返すことでポリマー鎖が切断され、力学物性が低下する点が課題の一つです。

 応用化学プログラム・田中准教授らの研究グループは、iPPに対して5重量%添加するだけで、破断強度を1.5倍に強化できる添加剤を開発しました。この添加剤はiPPの結晶構造中に入り込んで共に結晶化するPP部分と、架橋構造を形成するボロン酸部分から構成される高分子化合物で、iPP中の複数の結晶構造間に化学結合をつくることで機械的強度が上昇することが示唆されています。このような添加剤の合成は、以前に研究グループで開発したボロン酸含有ビニルモノマーを用いることで、高分子量化とボロン酸の均一な配置が可能となったことから実現しました。本研究は、iPPのリサイクル過程で失われた力学特性の回復のみならず、耐熱性の向上やiPPの結晶構造の制御など、さまざまな応用展開が期待できます。

論文情報
Enhancing Mechanical Properties and Crystallization Kinetics of Isotactic Polypropylene by Boronic Acid-Cross-Linked Additives. Kazuki Shimizu, Shin-ichi Kihara, Mikihiro Hayshi, Hiroyuki Koga, Yuushou Nakayama, Takeshi Shiono, Ryo Tanaka* Macromolecules, 2025, 58, 8143.
Doi: 10.1021/acs.macromol.5c00783


up