第65回 2021年度実務法学専攻入学者の皆さんへ

 ご入学おめでとうございます。

 今日から、皆さんの志を実現し、目指す法曹となるべく、学びを工夫し洗練させていきましょう。
 
 本専攻の教育メソッドは、事例解決力や知識活用力の育成に重きをおき、学修の転移による創造性の修得を試みる統合型教育プログラムを、トリプルチューター制や若手弁護士による学修フォローゼミ等を通じた学修コーチングシステムで支えるというオリジナルなものです。これにより、皆さんの学修を個別にバックアップしてまいります。
 
 皆さんが本専攻の教育メソッドを活かして着実に法曹への道を歩んでいただくことを期待しております。

 ただ、現状では2点ほどの懸念があります。
 
 第1は、新型コロナウイルス感染症の拡大状況です。ワクチン接種が始まる一方で、緊急事態宣言が解除されてまもなくにもかかわらず第4波ともいうべき急速な感染拡大が見られます。  現在、本学の方針は、授業は対面式を原則としたうえで、オンライン等での授業方法を活用するというものです。本専攻も授業は対面で実施します。また、自習室も通常の利用が可能となるように開室時間を徐々に拡大しています。速やかに良好な学習環境が整うように努めてまいります。
 
 そのためには、教職員を含め、皆さんお一人お一人が「感染しない、感染させない」という強い意思のもとで、気を緩めることなく、お互いにさまざまな事情を抱えていることを認識した上で感染リスクを抑えるため、感染防止対策の徹底をお願いたします。大学の感染防止対策はHPで最新の情報を確認してください。
 
 第2は、法曹への道の最初の関門である司法試験です。いわゆる法曹コースの設置に伴い司法試験の受験等も変更が予定されるなど、これから変動期を迎えます。
 
 そのなかで、本専攻は専門職大学院として司法試験合格率の安定化を目指していますが、緩やかでも右上がりを続けるという結果とはなっていない状況です。

 この原因の一つが、皆さんと教員とによる学びの深さにあるのではないかと考えています。この観点から個々の学生の皆さんの勉学を見ると、学ぶことに対する誠実さ(Sincerity)、正直さ(Honesty)という才能は皆さん備えているのですが、それを学びにおいても活かそうとするのではなく、むしろ自分自身の学びを真摯に振り返ることなく、わかったような気になって学びを止め、学びに誠実な態度をとることが格好悪いあるいはつらいなどと思って、学びを深める意欲となる誠実さを軽んじているようにさえ感じられます。資格試験も学力試験として捉え、これまでの試験勉強と同じであると安易に考え、できるだけ効率的に勉強することが価値あるものと信じているために、誠実さという才能を磨き、その強みを発揮するだけの努力がなされていないようです。

 誠実さという才能が光り輝くようにこれを磨いていく、そのために努力してこそ、その強みを発揮します。努力を重ねるうちに、自信もわいてきます。自信をもって胸を張って努力することで、どんな困難にも打ち勝つことができるでしょう。

 法曹をはじめとする専門職はプロフェッショナル性が求められ、それには高潔さ(Integrity)が不可欠です。高潔さを支えるのが誠実さであり、正直さです。そして、これらは学びを洗練することによって得られます。学びの努力と工夫によって皆さんのもつ誠実さを光輝かせ、その洗練によって高潔さを身につけましょう。一緒に頑張りましょう。

 これをもってお祝いの言葉に代えさせていただきます。

 ご入学おめでとうございました。


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