令和7年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰において、本学より以下の3人が受賞することが決定しました。
表彰式は、4月15日(火)に文部科学省で実施されます。
◆科学技術賞 研究部門
広島大学大学院先進理工系科学研究科 特任教授 辻 敏夫(つじ としお)
◆科学技術賞 開発部門
広島大学デジタルものづくり教育研究センター 特任助教 中谷 都志美(なかや としみ)
◆若手科学者賞
広島大学大学院先進理工系科学研究科 准教授 今任 景一(いまとう けいいち)
<業績の紹介>
◆科学技術賞 研究部門
【受賞者】辻 敏夫(広島大学大学院先進理工系科学研究科 特任教授)
【業績名】筋力学特性と機械学習機能を有する生体模倣型筋電義手の研究
※福田 修(佐賀大学教育研究院自然科学域理工学系 教授)とのグループ受賞
【業績概要】
上肢切断者の日常生活を支援するため、事故や病気で失われた人腕の運動機能を再現可能な筋電義手が求められている。しかしながら、従来技術では人腕のような滑らかでしなやかな運動を再現することは困難で、手指の多動作の識別制御も限界に達していた。また、コストの高さやメンテナンスの難しさも普及の大きな妨げとなっていた。
本研究では、人腕が有する筋力学特性を世界で初めて筋電義手の制御に導入し、しなやかで精密な運動制御を実現した。また、独自の機械学習機能により、高精度な運動意図推定を可能にした。さらに、3Dプリンタを用いた5指駆動型の筋電義手と筋シナジー理論に基づく制御法を新たに開発し、自然な手指の動きの再現に成功した。
本研究により、人腕の動作に匹敵する筋電義手の開発が進み、これまでは困難であった手指の生体模倣制御が可能となった。また、3Dプリンタの活用により、コストの削減やメンテナンス性の向上が図れ、実用化への道が大きく開かれた。
本成果は、上肢切断者の生活の質を向上させ、社会参加を促す一助となる可能性がある。また、日本発の革新的な筋電義手技術として国際福祉に寄与することが期待される。
◆科学技術賞 開発部門
【受賞者】中谷 都志美(広島大学デジタルものづくり教育研究センター 特任助教)
【業績名】モデルベースリサーチ技術を活用した革新断熱吸音部材の開発
※桂 大詞(マツダ(株)技術研究所 研究長)外3名とのグループ受賞
【業績概要】
近年、様々な業界でカーボンニュートラル(CN)実現と安全快適性向上との高次な両立に取組まれており、断熱省エネと騒音問題を解決できる高性能な断熱吸音部材を実現することは、全産業界の技術発展に貢献できる。高性能部材の実現には、計算技術の活用による機能予測型の技術開発プロセスが不可欠であるが、断熱吸音部材では計算技術の予測精度・計算コスト共に不十分で、未だ実験主体の試行錯誤型開発となっている。
本開発では、断熱吸音部材の技術開発プロセスを変革するため、材料モデルベースリサーチ(MBR)基盤技術として、実部材の微細構造分析・解析技術と、部材の複数機能を同時に性能予測できる計算技術を創出し実用化した。
本技術により、高い断熱&吸音性を最小限の原料使用量で得る世界トップレベルの自動車向け断熱吸音部材(従来比で各性能1.2倍、重量35%低減、コスト75%低減)を実現し、2020年以降、快適性向上・軽量化・CO2排出量削減へ貢献している。
本成果は、特殊な計算環境やスキルが不要、且つ汎用性の高い技術であり、鉄道車両、航空機、建築、家電、工作機器、医療機器などの様々な業界で、快適性向上、CN実現に寄与している。
◆若手科学者賞
【受賞者】今任 景一(広島大学大学院先進理工系科学研究科 准教授)
【業績名】機能性色素による刺激応答性高分子の開拓に関する研究
【業績概要】
外部刺激により物理的・化学的性質が変わる機能性色素を高分子構造中に導入することで、魅力的な機能を有する刺激応答性の高分子や材料が次々と報告されている。しかし、目的の機能に対して、低分子から高分子、材料までの構造は一気通貫して適切に設計されていなかった。
今任氏は、目指す機能から逆算して、低分子の機能性色素だけでなく高分子や材料の構造をミクロ〜マクロのマルチスケールで適切に設計し、新たな刺激応答性高分子や材料を開発して、その化学を確立した。例えば、自己修復や損傷検知、力応答性の光制御、光可逆的接脱着、ワイヤレスな電気化学的駆動などの新しい機能を有する高分子や材料を世界に先駆けて報告した。
本研究成果は、材料の長寿命化や資源の循環、将来の医療機器および福祉器具の開発などに大きく貢献すると期待される。
財務・総務室人事部福利厚生グループ
Tel:082-424-6024
E-mail:fukumu-fukumu*office.hiroshima-u.ac.jp
(業績内容についてのお問合せはこちら)
大学院先進理工系科学研究科 辻 敏夫
Tel:082-424-7677 FAX:082-424-2387
E-mail:toshiotsuji*hiroshima-u.ac.jp
デジタルものづくり教育研究センター 中谷 都志美
Tel:082-427-6904
E-mail:toshimin*hiroshima-u.ac.jp
大学院先進理工系科学研究科 今任 景一
Tel:082-424-7608 FAX:082-424-5494
E-mail:kimato*hiroshima-u.ac.jp
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